医療事故調査制度どう改善? 公正な調査手法普及や「呼び名変更」で
予期せぬ死亡事故が起きた際、第三者機関に医療機関が報告し、院内調査を実施する、医療事故調査制度ができて9年がたつ。遺族や医療安全を専門とする医師、弁護士らが課題や展望を議論するシンポジウムが10月、オンラインで開かれた。主な内容を紹介する。
この制度の目的は、事故の原因を分析し、再発防止につなげることだ。しかし、報告するかどうかは、病院長が判断する。「予期せぬ死亡」の基準のあいまいさもあり、報告する施設としない施設の格差が存在し、報告数は伸び悩んでいる。
改善に必要なことは何か。
長女を医療事故で亡くした、「医療情報の公開・開示を求める市民の会」代表世話人の勝村久司さんは、「安易に『予期していた』で片付けない。オネストトーキング(正直に話す)による情報共有」などをあげた。
名古屋大病院患者安全推進部の長尾能雅(よしまさ)教授は前提として、精度高く事故を把握する▽検証すべき事例を選ぶ▽公正な調査ができる――体制が求められていると指摘。だが、報告対象の定義がわかりにくく、調査するとなると「職員のストレスが増すのではないか」、と迷いが出る病院がある現状を語った。
また、事故は診断や治療選択、処置、管理など多くのプロセスの中で、様々なことが重なって起きると言及した。「適切な調査をすれば、全体がわかる。経験上、医師ら個人のみの問題となることはまれ。公正で信頼できる調査手法を普及させることが重要」
過失の有無と無関係に
京大病院医療安全管理部の松村由美教授は、月に1度の院内の医療安全管理委員会で「予期せぬ死亡」にあたるかを審議、院長に結果を伝える京大の手法を紹介した。「管理者(院長)が交代しても判断の質を維持できる」
府内の病院が事故判断に迷う際に相談にのったり、外部調査委員を派遣したりしている実績も語った。そのうえで、「医療事故調査」の名称変更を提案した。
「事故というと、『過失がな…