死の近さ表すガザの独白 ロバートキャンベル氏と錦田愛子氏が対談

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聞き手・佐藤達弥 田中瞳子

 パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘が始まり、10月7日で1年になります。戦争は人々から何を奪い、今後どうなっていくのか。錦田愛子・慶応義塾大学教授(中東政治)と、早稲田大学特命教授で日本文学研究者のロバート キャンベルさんによる対談の後編は、「言葉が映す戦争」について考えます。

 ――キャンベルさんは、戦火を逃れるウクライナの人々の言葉を書き留めた証言集「戦争語彙(ごい)集」(オスタップ・スリヴィンスキー作、岩波書店)を日本語へ翻訳。現地を訪ねた手記とともに昨年末、刊行されました。

 キャンベル 戦争以外にも多くのニュースがあり、私たちの意識は次から次へと流れていってしまう。その中で、実際に戦地で生きている人たちの目線を追体験できるような、具体的に想像できるきっかけになるようなものがあればいい。そうすれば自分に引き寄せて考えることができるのではないかと思っていました。

 「戦争語彙集」に出てくる、難を逃れる人々の目線は、ニュースや戦場写真家が伝えるものとは異なる。だからこそ翻訳しようと思い、自分でもウクライナへ足を運んで取材をしました。

 錦田 「バス」や「タトゥー」といった、誰もにつながり得るような語彙を中心に書かれていて、戦地の報道とは違う。その違いは、政治的な文脈から切り離されているところにあると思います。

 報道だと、何月何日にどこで何が起きた、ということが不可欠な要素として書き込まれている。それはもちろん必要なことですが、人々の共感を得ようとする上では邪魔な情報なのかもしれないと、「戦争語彙集」を読んで思いました。

記事後半ではお二人の対談の動画もご覧になれます。

 キャンベル 私がこの作品を…

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