家族介護、借金か退学…追い込まれる若者へ、福祉にできることがある
Re:Ron連載「知らないのは罪ですか?ー申請主義の壁ー」第10回
本連載のタイトル「知らないのは罪ですか」を見るたび、私が過去に出会った若い相談者たちの顔が思い出されます。
高校2年生のサトミ、大学2年生のジュン、高校1年生のユキ――。
サトミは家族の介護に追われ、大学進学を諦めかけていました。
ジュンは頼れる家族がなく、自身も体調不良で学費がまかなえず、借金か退学かの選択を迫られていました。
そして、ユキはDVに悩む母親と暮らし、外部に悩みを打ち明けられずにいました。
これらの若者たちが直面している問題には、解決の糸口である社会保障制度が存在します。しかし、彼らはその存在を知りませんでした。社会保障制度の知識は人生を大きく変える可能性を秘めている。なのに、多くの若者がこれらの制度の存在を知らないまま、困難に直面しています。なぜ、このような状況が生まれるのでしょうか。そして、私たちにできることは何でしょうか。今回は「社会保障教育」に焦点をあてて考えていきます。
日本財団が2024年に実施した「18歳意識調査」によると、17~19歳の若者が義務教育期間に学びたかった項目の第1位は「生きていくうえで必要なお金に関する知識や能力を身に着けること(金融リテラシー)」でした。そして第4位に入ったのが、「社会保障制度などについての知識を身に着けること」でした。
しかしながら高校においては、公民や家庭科で社会保障が扱われるものの、多くの教科書では医療、年金等に主眼を置いているため、これからすぐに訪れる進学にまつわるものや、就労などの日常生活との関連性が感じられにくい印象を与えています。この乖離(かい・り)が、社会保障制度を「自分とは関係ない」ものと感じさせてしまっているのかもしれません。
教える側の課題も存在します。ある高校では、教師の方々がこんなことを語っていました。
「実際に使う可能性のある社…