男児の死を悼む献花の「置き配」 中国当局の目を意識、葛藤する人々

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深圳=小早川遥平

 中国の深圳日本人学校に通う10歳の男児が刃物を持った男に刺されて死亡した事件で、男児の死が発表されてから一夜が明けた20日も、学校の校門前には次々と花束が届けられた。ただ半分近くは、バイクの配達員に届けられた「置き配」。そこから浮かぶのは、当局の監視を意識しながら生きる、中国社会の現実だ。

 校門前にバイクが止まる。ドライバーの男性が座席後部のかごから花束を取り出した。花束を台にそっと置くと、スマホを取り出し撮影した。男性は宅配ドライバー。撮影は、確かに配達したと証明するためだ。

 事件は中国の主要メディアで報じられていなかったが、19日午後にはSNSで男児が亡くなった情報が広まり、献花に訪れる人が増えた。

 直接、現場に来て手を合わせる人も多い。しかしその一方で、半分近くが置き配による献花だ。

 10歳の男児が登校中に男に襲われて亡くなった痛ましい事件だ。なぜ、こんなにも「置き配」が多いのか、配達員に声をかけてみた。

 「昨日からもう7、8回は来ている。(湖北省の)武漢や山西省のお客さんのものもある」

 20日朝に花束を届けに来たドライバーはそう話し、足早に次の配達に向かった。広大な中国の遠方でニュースに接したけれど、現場に来られない人が置き配を利用するケースがあるようだ。

「公安がこんなに…」

 ただ、取材を続けていると、違う側面も見えてきた。

 19日に花束を持って現場を…

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この記事を書いた人
小早川遥平
上海支局長
専門・関心分野
中国社会、平和、人権