家政婦の急死、二審は「労災」認める 遺族「皆を幸せにする判決」

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米田優人 宮川純一

 家政婦と介護ヘルパーを兼ねて住み込みで働いていた60代女性の急死は長時間労働が原因だとして、遺族が国を相手に、労災の遺族補償などの不支給処分の取り消しを求めた訴訟で、東京高裁(水野有子裁判長)は19日、女性の死亡を労災と認め、不支給を取り消す判決を言い渡した。

 高裁判決によると、女性は2015年5月、要介護者の自宅に住み込んで7日間働き、総労働時間は105時間に及んだ。勤務後に訪れた入浴施設で倒れ、亡くなった。

 一審・東京地裁は、家政婦として担った家事は、労働基準法の適用外となる「家事使用人」の仕事で、労災の検討対象になるのは介護の仕事をした31時間半だけだと判断。「過重業務」にはあたらないとして、遺族側の請求を棄却した。

 だが高裁は、家政婦紹介と介護事業を営む企業が女性に介護だけでなく家事業務も指示し、家事と介護で労働時間や賃金が明確に分けられていなかったことから、女性は「家事使用人」ではなく、家事・介護を一体として業務とする同社に雇われた労働者だと判断。家事分の労働時間も考慮し、女性の死亡は「短期間の過重業務」が原因と認め、不支給処分は違法とした。

 厚生労働省は「国の主張が受け入れられなかったものと承知している。今後の対応については、判決内容を十分に精査するとともに、関係機関とも協議した上で適切に対応してまいりたい」とコメントした。

法律見直しも

 「亡き妻を労働者として認め…

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この記事を書いた人
米田優人
東京社会部|最高裁
専門・関心分野
司法、刑事政策、消費者問題、独禁法
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    岩本菜々
    (NPO法人POSSE代表理事)
    2024年9月19日21時53分 投稿
    【解説】

    ・70年間続いた女性差別的な悪法が、たった一人の提訴から変わろうとしている この裁判は、NPO法人POSSEに、遺族の方が寄せた一本の労働相談から始まりました。地裁で敗訴してからは、私たちはその悔しさをバネにして、署名の立ち上げなど社会発信

    …続きを読む
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    明石順平
    (弁護士・ブラック企業被害対策弁護団)
    2024年9月19日22時54分 投稿
    【解説】

    担当弁護士の一人としてコメントする。 この事件の主たる争点は、被災者が労働基準法116条2項の「家事使用人」に該当するか否か、であった。 労働基準法116条2項は、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用

    …続きを読む