中南米の魅力伝えたい ユニーク企画や展示のBIZEN中南米美術館
来年3月に50周年を迎えるBIZEN中南米美術館(岡山県備前市日生町)の館長を務める森下矢須之さん(68)。中南米考古学に特化し、メキシコ~ボリビアの計11カ国から出土した土器や土偶、織物など、収蔵品は約2500点という規模を誇る。時代も紀元前4千年~16世紀前半まで広範にわたる。
漁網の製造・販売をしていた祖父が1975年に開館した。祖父は商用で訪れたペルーで、古代アンデスの遺跡調査に携わり「南米のシュリーマン」と呼ばれた秋田出身の実業家・天野芳太郎(1898~1982)と出会う。天野が現地に設立した博物館の遺物に触れ、魅了されて収集を開始したのが始まりだった。
祖父時代からの事業を手放し、2005年に3代目の館長に就いた。森下美術館だった名称を、親しみやすい現在の名前に変更。「楽しみながら興味を持ってもらえる美術館にしたかった。来館者にはリピーターになってほしいなと」
その思いは、これまでのユニークな企画に反映されている。土偶ばかりを集めた「古代中南米土偶まつり」、土器に描かれた動物、動物土偶や石偶などを見せる「古代中南米動物園」……。いまは1年を通じたテーマを決め、展示品を半年ごとに入れ替える。ヘソイノシシの土偶をモチーフに、ゆるキャラ「ペッカリー」も誕生させた。
自ら来館者を案内する。儀式で使われた、液体を注いで動かすと鳥がさえずるような音が出る「笛吹きボトル」も実際に試して説明する。
館内は撮影や会話もOK。都市部に立地しない美術館だからこそ常識を打ち破りたいと思った。地域の「コンシェルジュ」を自称し、おいしい店を紹介したり、大雨時に駅に送迎したりもいとわない。
古代中南米の文化や社会の豊かさを広く知ってほしいという願いがある。「世界平和もミッションのひとつ。中南米を好きになり、旅行に行って仲良くなってほしい。友達づくりは戦争を抑止する。そのきっかけになったら」
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1956年、大阪市生まれ。慶応大卒業後、メキシコ国立自治大で中南米の歴史や文化を学ぶ。美術館ではチョコレートの歴史をひもとく特別展「チョコレートの王国…エピソード2」を開催中。50周年記念の特別展は11月2日から始まる予定。原則前日までの予約制(0120・346・287)。開館時間や入館料は同館ホームページ(https://www.latinamerica.jp/info/access.html)へ。