使用済み燃料乾式貯蔵に懸念や反対 原発アンケ、県内首長の回答は?
朝日新聞が16原発30キロ圏にある156自治体の首長に行ったアンケート。東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の再稼働を11月ごろに控える宮城県内では、対象の8人中、東松島市の渥美巌市長を除く7人が回答した。同社が計画する使用済み核燃料の「乾式貯蔵」に反対や懸念の声が上がり、理解の進んでいない現状が浮かんだ。
乾式貯蔵は、金属容器に収納した使用済み核燃料を循環する空気で冷やして保管する方式で、東北電は2028年3月に運用を始める計画。再稼働すれば、使用済み核燃料を保管する燃料プールが約4年で埋まり、原発を動かせなくなる恐れがあるためで、同社は保管期間を一時的とする。ただ保管期限を示しておらず、保管が永続的に続くことへの懸念は根強い。
アンケートでは「最寄りの原発敷地内で乾式貯蔵を受け入れることができるか」と質問した。
県と女川町、石巻市は乾式貯蔵施設の設置について東北電から事前協議の申し入れを受けている。村井嘉浩知事は「検討中」、女川町の須田善明町長は「回答を差し控える」、石巻市の斎藤正美市長は「現時点では申し上げられない」と答えた。女川町は「実績があり安定性も確認されている」とする一方、「保管の長期化も懸念される」と言及した。
周辺自治体では慎重な意見が目立った。美里町の相沢清一町長は「受け入れることができない」と反対。「政府および電力事業者の見通しの甘さを露見したもので、時間稼ぎに過ぎない」と批判した。南三陸町の佐藤仁町長は受け入れ可否を「判断できない」としつつ、「要望としては受け入れてほしくない」と回答。涌谷町の遠藤釈雄町長は「実績の積み上げが少なく理解するに至らない」ため、「わからない」とした。
登米市の熊谷盛広市長は「厳しい安全基準をクリアすることが前提だが、県と立地自治体の女川町、石巻市の意向を尊重」と答えた。
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1月の能登半島地震では避難道路が寸断し、一部の放射線防護施設が機能に損傷を来した。避難計画見直しの必要性について聞くと、美里町が「必要」、南三陸町、登米市が「どちらかと言えば必要ない」、県、石巻市、女川町、涌谷町は「その他」とし、回答が割れた。
福島第一原発事故では物流が途絶え、屋内退避では「孤立」が問題化した。美里町は見直しが必要なポイントについて、「屋内退避中の水や食料の確保、通院や介護サービスの利用」などを挙げた。
政府に避難計画で改善や再検討を求めたい点を聞いたところ、意見が相次いだ。
県は「省庁横断で検証を行い、新たな知見等が確認された場合、原子力災害対策指針等への反映や、地方自治体への支援など必要な対策を講じてほしい」と注文。能登半島地震では避難道の盛り土部分で崩落が目立ったことから、女川町は「盛り土で造成された道路の強靱(きょうじん)化」などと求めた。涌谷町は「広域避難については、国の責任において指針、整備計画を実施されたい」と訴えた。
アンケートでは、今後の原発の必要性についても聞いた。「当面必要」は女川町と南三陸町、涌谷町。女川町は「供給面での現実的な対応をしながら、代替電源の開発・普及や効率化を進め原子力への依存度を低下させていく道筋が現実的」などと指摘した。
「必要ない」は美里町。県、石巻市、登米市は「その他」だった。県は「国において総合的に判断」と答えた。