メディア・エンタメ界、人権経営ようやく本腰 旧ジャニーズ謝罪1年
旧ジャニーズ事務所(SMILE-UP.〈スマイルアップ〉)が、創業者である故ジャニー喜多川氏の性加害について謝罪し、1年が経つ。今年5月に、国連人権理事会の「ビジネスと人権」に関する作業部会が、訪日調査に基づいて公表した報告書にも、この問題は言及されていた。性加害問題は、とくに日本のメディアやエンターテインメント企業が人権問題に向き合う姿勢へと影響を与えつつある。企業を「ビジネスと人権」の観点から支援してきたオウルズコンサルティンググループの矢守亜夕美さんに、メディア・エンタメ業界の変化と今後とるべき姿勢について聞いた。
――作業部会の報告書について注目すべき点は。
公表当時、ジャニーズ問題のところをピックアップして、報じるメディアが多かったですよね。スマイル社の対応を「努力が認められる」と一定程度評価する一方で、被害者救済についてさらなる努力を求めたとする部分です。今回の報告書の中では、実際には男女格差や、マイノリティーへの差別、原発事故の処理にあたる作業員をめぐる状況など、日本における幅広い人権課題が指摘されています。
エンタメ業界全体の取り組みが遅れているということも、結構はっきり指摘しています。昨年、厚生労働省が「過労死等防止対策白書」のなかで公表した「20%以上の俳優がセクシュアルハラスメントを経験している」という調査結果などを引用した上で、放送局や出版社、大手広告会社などは「性的虐待を予防するための人権尊重責任を果たしていない」と指摘されてしまった。
今回のジャニーズ問題を契機に、日本のメディアとエンタメ業界は、「人権リスク(企業活動により個人や集団の人権が侵害されるリスクのこと)」が特に高いと、国際社会に受け止められたということです。こうした課題を解決できているのかという目で、今後は見られていくと思います。
――報告書は、どのような変化を日本社会に求めているのでしょうか。
メディア・エンタメ業界に「大きな変化」が起きていると矢守さんは指摘します。しかしテレビ番組には所属タレントが一貫して起用され続けています。この「変わらなさ」をどう見るべきかも、聞きました。
この報告書の末尾にある勧告…
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ジャニー喜多川氏の性加害問題
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