「だまっとれん」市民561人の告発状 監視の目を絶やさぬには
現場へ! 見えないカネ⑤
2019年12月。広島地検に市民から計561通にのぼる告発状が提出された。地元選出の法相(当時)・河井克行と妻の参院議員(同)・案里が同年の参院選で買収行為をしていた疑惑が発覚。2人を公職選挙法違反などで刑事告発するものだった。
疑惑は10月に、週刊文春の報道で明らかになった。広島の市民は、自分たちの選挙で不透明なカネが飛び交っていたことを、東京からの報道で初めて知った。
「地元で何もしないでいいのか」という声があがった。市民運動に携わってきた山根岩男(73)らは「河井疑惑をただす会」を立ち上げ、市民から告発状を集めることにした。「真相を明らかにせよ」と記した横断幕を掲げ、街頭宣伝もした。事務局が用意した告発状に、市民たちは次々と氏名や住所を書き入れ、押印した。
20年1月に広島地検は告発状を受理し、捜査を開始。6月に河井夫妻を逮捕、その後起訴した。
告発状をまとめた弁護士の山田延広(75)は当初、他の弁護士からこう忠告されたという。「週刊誌の報道だけで告発すれば、逆に誣告(ぶこく)罪を問われかねない」。山田は「市民は怒りを持っていた。会の運動の広がりが、検察を動かした」と振り返る。
政治とカネの問題をめぐり、一般市民が政治家を告発する例は日本では珍しい。
背景には、情報公開が不十分なため市民が気づきを得にくいことがある。政治資金制度に詳しい日大名誉教授の岩井奉信(74)は「日本も米国のように議員の収支データを見えやすくすれば、不正を告発する団体や個人はもっと出てくるはずだ」と話す。
さらに、告発しても検察が捜…
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