東京都知事選で話題になった選挙ポスターや政見放送、コロナ禍で続いた自粛やマスクを巡る議論など、近年、様々なレベルで「ルール」のあり方が問われる事態が起きている。ルールには罰則を伴う法律から明文化されていないマナーまであるが、時にはそれにしばられ息苦しく思うこともある。私たちは社会に張り巡らされたルールとどう向き合えばいいのか。3年前に東京で「ルール?展」を企画した弁護士の水野祐さんは、「ルールに対する見方を変えることが必要だ」と説く。どういうことなのか。話を聞いた。
「ルール?展」企画した弁護士・水野祐さん
――最近、ルールを巡る議論で気になっているものはありますか?
たとえば身近な例だと、騒音やボール遊びをめぐって禁止事項ばかりの公園だったり、電動キックボードのあり方やライドシェアを解禁するのかどうかをめぐって議論があったり。数年前には、学校の変な校則について話題になって、それを見直す動きが取り沙汰されたりしましたよね。
慣習、規則や法律まで、様々なルールがありますが、それらを「守る」「守らない」という議論はたびたび起こっていますね。
――3年前に開催した「ルール?展」は、ルールをテーマにした作品を展示したほか、来場者が展示内容を変化させることができたり、意見を交わしてルールをつくる体験型の企画があったりしました。どういう狙いがあったのでしょうか。
「ルール?展」は、六本木の「21_21 DESIGN SIGHT」という美術館から「法律に関するテーマの展覧会を企画してくれないか」という依頼があったことがきっかけです。テーマをもう少し広くルールに広げたうえで、日本人が邪魔なもの、遠ざけておきたいものとして捉えているルールにもポジティブな側面があり、その側面に光を当てることにより、ルールの可能性やルールとポジティブに向き合っていく視点を提示できるのではないかと考えて、3人のディレクターチームで企画しました。
ちょうどその頃は、コロナ禍で様々なルールをめぐる議論が活発になったこともあったのか、展覧会にたくさんの人が来てくれたのではないかと思います。会期が延期されたり、予約制になったり、展覧会のルールも会期中に変わりました。
――開催して気づいたことはありましたか?
鑑賞については、従来、美術館などで課せられるルールを撤廃し、可能な限り制限がない状態で始め、必要に応じてルールを更新していく仕組みをとりました。参加者が自由に動かせる箱を会場に用意していたこともあり、その箱を使って参加者が自撮りするのがSNS上でバズってしまい、参加者が他の鑑賞者のことを考えずに作品の前に写真撮影のために長時間居座ったり、作品を壊してしまったり。結局、撮影可能日と禁止の日を分けたり、「うるさくしないで」と呼びかけたり、どんどんルールを増やしていかざるを得なくなりました。そのようなルール変更の履歴も作品の一部として掲示しました。来場者同士の声かけなど「相互作用」が生まれたらと期待していたのですが、結局、制限的なルールが増えていきました。参加者からこんなルールが欲しいという意見箱も設けたんですが、「これをやめさせて」「これを禁じて」というものばかりで、ポジティブなルール提案はほとんどありませんでした。
――マナーや常識を守れないと決まりが増えていく。展示に限らず社会一般にもつながる構図ですね。
ルールについてのリテラシーが低い社会では、ルールは増えざるを得ず、結果的に自由が失われていく。そんなジレンマを表した展示だったと思います。一方で、コミュニティーに対して主体性がある人が多く、ルールが自分のものだという感覚が共有されていれば、ルールは少なくて済む。結局は、民主主義の問題だと思っています。
「ルールがあるから」で思考停止せずに…
――どうしたら主体性を持つようになるのでしょうか。
議論してルールを変えた体験が少しでもあると違うのではないでしょうか。学校、家族や友人関係、会社、地域でもいい。そのようなコミュニティーの中での小さなルールが条例や法律のような大きなルールにつながっているという「ルール観」が広がると変わってくるのかもしれません。
――「ルール観」を変えていく必要がある、と。
ルールは「守る」ものじゃな…
- 【視点】
水野さんのご意見に大きく反対したいわけではないのですが、考える切り口を増やすため、こちらに書かれている意見とバッティングする意見をあえて書いてみようと思います。 ちなみに本コメントは思いつきで書いているのではなく、学問的には、イギリスが中
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