ホロコーストにすら否定論 朝鮮人虐殺、後の時代に事実を残すために

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聞き手・田渕紫織

 1923年の関東大震災時、「朝鮮人が略奪や放火をした」といった流言が広まり、朝鮮人らが殺傷される事件が多発した。政府側は長年、「記録が見当たらない」との見解を繰り返してきたが、昨年も相次いで新たな公的資料の存在が明らかになるなど、残された記録や証言をたどる営みが続いてきた。「歴史修正主義」の著書がある学習院女子大の武井彩佳教授(ホロコースト研究)に聞いた。

 虐殺などの大きな人権侵害が起こった後、年数が経ち、生存者がいなくなると、当然のように共有されていた事実に対して「あったかどうか分からない」「十分な事実確認ができない」といった言説が生まれやすくなります。

虐殺の事実、100年経つと

 例えば、現在のガザの惨状を疑う人はいないと思います。でも、100年経ったら「あの映像は本物か」「やらせで証言しているのではないか」と疑義を挟む人が出てくるでしょう。歴史研究の手続きを踏んでこれだけの人が殺害されたと論証された事実と、根拠にならない根拠を挙げて「虐殺はなかった」とする意見が、あたかも同等の価値があるかのように並べられるかもしれません。

そうならないために、できることは? 詳しく聞きました

 歴史的事実は、意識的に継承…

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この記事を書いた人
田渕紫織
東京社会部
専門・関心分野
災害復興、子ども
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    みたらし加奈
    (臨床心理士・NPO法人mimosas)
    2024年9月1日7時0分 投稿
    【視点】

    今もなお朝鮮学校、在日の人々への差別や偏見の眼差しは、今もなお続いている。ここで起きた虐殺は絶対に風化させてはならず、また現代に生きる私たちもこの過ちを繰り返す可能性を帯びている。 関東大震災における虐殺では、日本で暮らす当時の朝鮮人だけで

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    大川千寿
    (神奈川大学法学部教授)
    2024年9月1日9時31分 投稿
    【視点】

    「歴史的事実は、意識的に継承していかなければ簡単に風化し、埋没してしまいます」。この言葉が心に響きます。 事実そのものを忘れないようにすることは、その事実で犠牲になった一人ひとりの存在を心に留めることでもあります。記事の写真にある「躓きの

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