現場に判断委ねた南海トラフ地震情報 防災人材養成へ国は地域支援を
神里達博の「月刊安心新聞+」
8日、日向灘でマグニチュード(M)7.0の地震が発生した。その震源が南海トラフ地震の想定震源域内であったため、気象庁は初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表、「今後1週間は巨大地震に注意するよう」呼びかけた。
幸い、今のところ巨大地震は起きていない。だが日向灘の地震の翌日に、想定とは異なる神奈川県西部を震源とする、M5.3、最大震度5弱の地震が発生した。金曜日の午後8時ごろだったが、私も自宅で揺れを感じ、「ついに南海トラフが動いたのか」と、狼狽(ろうばい)した次第である。
周知の通り、南海トラフ地震では桁違いの人的・物的被害が想定されている。2013年に内閣府が公表した推計では、32万3千人の死者、220兆3千億円の経済的損失の可能性が示されている。
もっとも、これは冬の風の強い日に、被害が大きくなると考えられる東海地方が著しく被災した場合、などといった最悪のシナリオにおける数字だ。計算にはさまざまな仮定を置いており、細かな条件の違いによってかなり結果は変わる。
実際、19年には最新のデータで再計算をした数字が公表されており、そこでは経済的損失は最大で171兆6千億円に修正されている。
それでも、東日本大震災の被害規模と比べると1桁大きいイメージである。「あの大地震よりもさらに大きな地震が、列島の南西側でも時々起こる」ということを、私たちは残念ながら覚悟しておく必要がある。
そんなとんでもない災厄がやって来るというのなら、なんとか「地震予報」を実現して欲しいと思う人も多いだろう。だが、少なくとも場所と時間と地震規模を特定するような「予知」が実用化される可能性は、非常に低いと考えられる。
では、今回の臨時情報を、私…
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