気候変動の話をしよう② 環境活動家・黒部睦さん
スウェーデンで環境活動家グレタ・トゥンベリさん(21)の学校ストライキに触れたことをきっかけに、音楽などのアートやファッションを通して気候変動の問題を伝え続ける黒部睦さん(23)。
格差や不平等から環境問題をみる「気候正義」を訴えつつ、それだけではアクションは広がらないと考えてきたという。〝グレタチルドレン〟が日本で模索する、「届くメッセージ」とは?
気候変動への危機感を共有し、多くの人たちのアクションにつなげていく。そのためのコミュニケーションのあり方について、様々な立場の方から、意見を聞くインタビューシリーズです。
遊ぶ時間まで割いて 「私も何か」
――日本のグレタチルドレンと言われることがあります。
東京生まれ、育ち。中高は八王子の都立一貫校。国立音大で声楽を学んでいました。2019年、高校3年生の夏に、SDGsを学ぶ研修に参加して、スウェーデンのマルメという都市を訪れました。
行政の仕組みや都市空間のデザインが環境負荷がかからないように設計されていた。
レジ袋は基本使わない。あっても、トウモロコシ由来のリサイクル素材。生ゴミでガスを発生させて発電してバスを走らせるし、廃棄ガラスをリサイクルして道路を敷設する。化石燃料に頼らないために、道路も、歩行者と自転車優先。駐車場が駅から遠い場所にあり、有料。意識が高くなくても、自然とエコに生活できる。「個人の責任」に任せていない社会づくりがすばらしくて、衝撃を受けました。
市役所前で座り込む高校生や大学生の同世代に出会い、さらに驚きました。グレタさんの活動を契機に広がった気候変動に抗議する学校ストライキです。
すでに環境先進国なのに、学校を休んでまで訴えていた。遊ぶ時間や学ぶ時間を割いてまで行動している危機感。何もしていない自分は、恥ずかしくて、私も何かしなきゃと、「気候変動」「温暖化」など単語で理解していただけのものが、自分事になりました。
――帰国後は?
受験勉強をしながら、何かアクションを起こしたいと思って考えました。でも、日本の文化に怒りや座り込みをして学校でストライキするのは、なじまないと思いました。
そこで学校のロッカーに、気候変動問題について、身近に行動できることを書いたポスターを貼ることを始めました。SNSで友だちに「やってみない?」と誘いかけると、予想外に反響があって、60人が賛同してくれました。SNSに活動を報告していたら、グレタさんの活動に触発されて各国で若者たちが立ち上げた「Fridays For Future」の日本メンバーから声がかかり、参加しました。
国立音楽大で声楽を学びながら、気候変動についての社会運動を頑張っていました。全国に支部があり、中高大学生が気候変動をテーマにした行進、駅前で呼びかけ、政府に対して、政策目標数値に対しての声明を出したり、署名を集めて提出したり、企業で講演したりしてました。
「子ども産むことも悩むよね」
――伝える上での悩みはありましたか?
ずっと「気候正義」を訴えてきました。
その結果、政府や企業も少し変わってきた。でも、関心が広がっている、アクションにつながっているという手応えは薄く、長期的に社会全体を変えられるには遠い。大学2年生になる頃には、葛藤して疲れてきました。
悩み、模索しながら大切にしてきたことは、三つです。
「特別な意識が高い人」ではなく、「ふつうの私」が周囲と同じ目線で発信しているのだと分かるようにすること。
私がスウェーデンで気候変動が自分事になったのは、自分に近い世代の人のアクションに触れたからです。だから、親しみやすさや葛藤も率直にオープンにして発信しています。
「暑すぎる。地球も途上国で影響を受けている人も心配で泣けちゃうね」「こんなに暑いと、将来子ども産むことも、悩むよね」といった感じです。
二つ目は、自分自身も持って…
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- 山内深紗子
- デジタル企画報道部|言論サイトRe:Ron
- 専門・関心分野
- 子どもの貧困・虐待・がん・レジリエンス
- 【視点】
日本ではとかく評判の悪い「世界的環境アイドル」グレタ・トゥーンベリだが、ヨーロッパでは若者層からいまも絶大な支持を受けており、そのマインドの根本には、 ①自分たちの世代の生存のためには「世界の持続性」が必須であるが、 ②大人世代はそのへんテ
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