誹謗中傷を世界に拡散させた「政治的背景」とは 五輪女子ボクシング

有料記事オリンピックとジェンダー

聞き手・二階堂友紀

 11日(日本時間12日朝)に閉幕したパリ五輪の女子ボクシングでは、2人の選手の出場資格を巡る誹謗(ひぼう)中傷が起きました。スポーツとジェンダーやセクシュアリティーについて研究する井谷聡子・関西大准教授は、「政治的な背景」が世界的な中傷の拡散を加速させた一因と指摘します。

 ――今回の五輪では、女子ボクシング66キロ級のイマネ・ヘリフ選手(アルジェリア)と、57キロ級の林郁婷(リンユーティン)選手(台湾)がネットの標的とされました。2人はともに金メダルをとり、ヘリフ選手は「SNSの誹謗中傷は非常にひどいものだった。それらは無意味で、人の尊厳に影響を与える」と語りました。

 まず、世界中から虐待的とも言えるほどの誹謗中傷を受けた2人が、集中力を保ち、最後まで闘ったことに敬意を表したいと思います。

 競技能力の高い女性選手の性別が疑われ、差別的な視線が注がれる事態は、これまでも繰り返されてきましたが、今回は「トランスジェンダーなのではないか」という形で中傷が広がった点に特徴があります。

 このことは、トランスジェンダーに対する差別が、世界的に危険なレベルに達していることを示しています。ただ、その背景に政治的な対立があることを知らなければ、今回の事態を正しく理解することはできないでしょう。

米副大統領候補「ハリス氏の考え方が行き着く先」

 ――中傷を加速させた「政治的な背景」について、教えてください。

 トランスジェンダーの権利を…

この記事は有料記事です。残り3188文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
二階堂友紀
東京社会部
専門・関心分野
人権 LGBTQ 政治と社会