欧州で起きているのは「右傾化」ではない 本質は政治の流動化

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聞き手 シニアエディター・尾沢智史

 欧州の各国で右派政党が伸長しているといわれます。しかし、著書「欧州の排外主義とナショナリズム」でサントリー学芸賞を受賞した政治学者の中井遼さんは、欧州全体が右傾化しているわけではないと考えます。

 実態以上に右派政党が目立つ理由とは何か。今の欧州の「右」とは何なのかを聞きました。

 欧州が「右傾化」しているといわれますが、私は違った見方をしています。

 今年の欧州議会選挙で右派の議席が増えたのは事実です。ただ、増えたのは主に仏、独、オランダです。北欧では退潮気味で、ハンガリーやポーランドなど東欧でも伸びていない。

 かつての欧州では、右と左を分けるのは主に経済政策で、右派は自由市場重視で小さな政府、左派は再分配重視で大きな政府を目指しました。今はその枠組みが崩れてしまっています。

 左派は、環境問題や格差問題…

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    倉田徹
    (立教大学法学部教授)
    2024年8月6日8時22分 投稿
    【視点】

    左派は理念が明確で各国共通、右派は不明確で国ごとで違うというのは分かり易い解説ですね。ナショナリズムは、各国が負ってきた条件や歴史を反映して、様々な形をとります。中井先生の欧州研究に加え、例えば最近刊行された、台湾の呉叡人氏による、日本の植

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