中国5県鉄道旅・復路 「許容できない」廃線危機への思いに触れる
中国5県をめぐる鉄道旅の復路は、山口県下関市から中国山地を抜けて鳥取市に戻るルートだ。
午前5時55分に下関を出発。中国山地を抜けるローカル線は本数が少なく、緻密(ちみつ)な計画が必要で、「乗り鉄」の腕の見せどころでもある。
道中での取材を考えると午前11時前には三次(広島県三次市)に到着したい。そのため、新山口(山口市)から広島までは山陽新幹線を使うことにした。新幹線だと風光明媚(めいび)な瀬戸内の景色を堪能できないうえ、「乗り鉄」として何となくずるをしている気分になる……。
広島から芸備線で鵜飼(うか)いで有名な中国山地の玄関口・三次へ。芸備線は三次より先の備後庄原(広島県庄原市)―備中神代(岡山県新見市)は利用者が少なく、廃線が取りざたされている。
JR西日本は昨年、この区間の再構築協議会の設置を国に要請。今年3月に、第1回の協議会が開かれ、国も参加する形で存廃や利用の促進、バスへの転換など芸備線の将来像を話し合い、3年以内を目安に存廃の方針をまとめることになった。
駅前にある三次市交通観光センターで会った政森進さん(74)は、三次と江津(島根県江津市)を結ぶ三江線が廃線になったときの三次市観光協会の専務理事だった。三江線を廃線にしてしまったという悔いをずっと持ち続けている。現在は三次観光推進機構の代表理事を務め、「(芸備線で)三次は廃線の対象ではないが、地域全体のことを考えれば絶対に許容できない」と強調する。
そんな言葉を胸に刻み、三次から備後落合(広島県庄原市)に向かう。普段は乗客が少ないというが、この日は夏休みの週末とあって30人ほどの乗客で1両編成の列車はほぼ満席。乗り合わせた広島市在住の瀬戸山等さん(68)は「普段からこうならいいんだけどね」。
途中の備後西城(同)でハプニングが起こった。この日の三次市の最高気温は38・5度。レール温度が上昇し、ゆがみが脱線を起こす恐れがあるということで運転見合わせになってしまったのだ。運転士が申しわけなさそうに説明するが、安全第一なら仕方ない。乗客は車両から降りて携帯をかけたり、自動販売機で飲み物を購入したり。「いつ再開するかわからないのであまり遠くに行かないでくださいね」と運転士。
酷暑で線路が……、思わぬハプニングも体験
約1時間で再開、備後落合で…