米の「在庫ある」のに「店にない」のはなぜ? 備蓄米放出求める声も

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座小田英史 中野浩至

 米不足が叫ばれるなか、注目を集めているのが「政府備蓄米」だ。100万トン近くに上る米の一部でも出回れば品薄も解消されるのでは、と期待の声もあるが、国は消極的な姿勢を崩さない。なぜか。

 「なぜ倉庫に眠らせたままにしておくのか。むしろここは開放するべきではないか」。8月26日、大阪府の吉村洋文知事は記者団に対し、こう語気を強めた。府内の8割の小売店で米の在庫がないという緊急調査を踏まえ、農林水産省に対して備蓄米の放出を求めたことも明らかにした。

 農水省が全国のスーパー、生協計約1千店舗の調査を分析したところ、8月の第2週は消費者の米の購入が前年同期と比べ4割ほど増加。南海トラフ地震臨時情報などの影響とみられ、「消費者は9月分を前倒しで買っている状態」(農水省幹部)という。

農水相は放出に慎重姿勢

 こうした事態を受け、農水省は8月27日、流通業者に対し、円滑な米の流通の確保に向けた対応を要請。ただ、秋田県大潟村の米農家、今野茂樹さん(70)は「米どころの秋田でも米がない状態。国の流通業者への働きかけが遅すぎる。主食米ではなく飼料用米を作れという国の方針にも問題があったのではないか」と話す。

 それでも坂本哲志農水相は備蓄米の放出について同30日の会見で、「米の需給や価格に影響を与える恐れがあるために、慎重に考えるべきだ」との姿勢は崩さなかった。

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2024年9月1日13時41分 投稿
    【視点】

    家庭用米、業務用米の区別や市場の違い、さらには南海トラフ対策としての買いだめなど、様々な要因が絡んだ結果、スーパーからコメが消えたという状況であるのに、この表面に見えるところだけを取り上げて、政府の減反政策の問題や、農家を過剰に保護している

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