ブタの腎臓移植「日本でこそ重要」 世界初、米国の執刀医が語る展望

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聞き手・野口憲太
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 世界的に不足する臓器のドナー(提供者)の解決策として期待される、ブタからヒトへの「異種移植」。今年3月、米国のマサチューセッツ総合病院で、遺伝子改変されたブタの腎臓が末期腎不全の男性患者(当時62)に移植された。ブタの腎臓が患者に移植されたのは世界で初めてだったが、患者は退院後の5月に急死したものの、移植した腎臓は正常だったことから、実現への大きな一歩との評価もある。執刀した河合達郎医師が国内メディアの共同取材に応じ、今後の展望を語った。

 ――世界で初めてブタの腎臓を患者さんに移植しました。

 最終的には拒絶反応もなく、移植自体は成功したと考えています。

 ただ、患者さんの選択(どんな患者に移植を実施するか)に関しては、問題がありました。

 移植を受けたリチャード・スレイマンさんは残念ながら亡くなってしまった。長く診てきた患者さんで、急変した当日の朝には外来でも診て急変するような兆候はなかったので、非常にショックを受けました。

 ――なぜ亡くなったのでしょう?

 解剖してわかったのは、手術前の評価以上に、患者さんの心臓が悪い状態だったことです。虚血性心疾患心筋梗塞(こうそく)などで心臓の筋肉が壊死(えし)して機能が悪くなった状態)が進んでいました。

 あの心臓だと、突然の不整脈で亡くなってしまうことは、(危険な不整脈を起こしやすい)腎不全の患者さんだということもあって、やむを得ない状況でした。

 ――心臓の状態に、移植は影響したのでしょうか。

 「強いて言えば」ですが、移植した(ブタの)腎臓が患者さんの体の大きさに対して、少し小さめだったことの影響が考えられます。

 腎臓が小さいと、どうしても…

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