SNSの文化戦争 二項対立の「脱構築」試み、陰謀論・デマに対抗を
ソーシャルメディアはどこへ③ 評論家・藤田直哉さん
誰もが手軽に発信でき社会を変えるきっかけになる一方、批判の応酬の場として分断を加速させてきたSNS空間。私たちはどう向きあえばいいのか。ネットカルチャーや陰謀論などに詳しい評論家の藤田直哉さんは、SNSにおける二項対立の「脱構築」を試みていると言います。なぜ? どうやって? 藤田さんに聞きました。
――炎上している話題に対してX(旧ツイッター)を中心に積極的に発信されています。どのようなことを意識していますか。
たとえば最近だと、Mrs.GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のミュージックビデオ(MV)が炎上しました。かつてアメリカ大陸を“発見”したと言われたけれど、今ではネガティブな評価が多いコロンブスを肯定的に扱い植民地主義を肯定しているように見えるということで批判され、MVは取り下げられたわけですが、それに対して僕は「猿の惑星」をモチーフにしているという読み方をして、「そうじゃない解釈もある」ということを指摘したんです。
「猿の惑星」の原作では、猿はアジア人や日本人のメタファーだと読めます。MVでは、猿の文明のほうがレベルが高いという風に描かれているから、コロンブスが必ずしも何かを教え諭したり、西洋人のほうが上で支配するのを肯定したりしているのではなく、西洋人が文明の高い側に何かを教えようとしている逆転の状況を描き皮肉を言おうとしているようにも読めるんです。
ただ、この解釈についてはどちらかと言うと、反ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)とかナショナリズム的な心情を持っている人たち、つまりフェミニズムやポリコレ的なものが日本文化に対する侵略だと思っている人たちに支持されがちです。なので、この解釈は、だいぶ批判を受けました。でも、実は僕は、そうした解釈をしながら、最後に結論として「だから邪悪なんだ」と結論を出しているんです。いわゆる「ポリコレ」的立場と「反ポリコレ」的立場にネットでは分かれがちですが、この主張は「どっちサイドか?」と混乱をもたらすわけですよね。結局、両方から非難を受けることになります(笑)。
――そうした反応も織り込み済みであえて発信した、と。
そうですね。分断があり、単純にどちらかサイドの意見に同一化してしまいがちで、対立が硬直化するという問題があると思います。その図式で解釈しづらい、両義性のあるような意見を言うことによって、双方から反射的な批判が来るのだけど、リツイート(リポスト)などをして双方の言い分を見せ合うことを通じて、単純な構図による分断、世界観が違う両者の間に何かつながりがつくれないかなと考えているんです。それこそが狙いで、それを通じて、SNSの中でも相手を理解しようとしたり、少し熟考したりするような回路が生まれないかな、と思っています。
デリダの「脱構築」、柄谷行人の「イロニー」を
――コロンブスのMVもですが、SNSでは表現のあり方をめぐる議論や対立が繰り返し起こっています。
基本的には「文化戦争」と呼…