県立図書館のデジタルライブラリー好評 郷土資料など1400点公開
古地図や、養蚕・製糸に関する資料など、群馬県内の歴史や文化を今に伝える群馬県立図書館の「デジタルライブラリー」が閲覧数を伸ばしている。埋もれがちな所蔵品を、インターネットから、いつでも閲覧できる手軽さが受けている。
88万冊余りの蔵書がある県立図書館では、現在、古い蔵書や貴重な資料の保存・公開のため、デジタルのアーカイブづくりに力を入れている。市町村の図書館に比べて研究向けの専門的な資料が多く、利用者の目に触れる機会がないまま眠る貴重な資料も少なくないためだ。
そこで、著作権が切れたり、公開の許諾が得られたりした本や郷土資料のうち価値が高いもの、珍しいものなどから順にデジタル化し、2012年からネット公開を始めた。現在、「富岡製糸場と絹産業遺産群」といった養蚕・製糸業関連や、赤城山の古い風景集など約1400点を公開中だ。
昨年度のアクセスは約2万5千回。5年前に比べて1.7倍に伸びた。
背景には、資料の充実やスマートフォンの普及がある。加えて「新型コロナで図書館に足を運べなかったことや、3年前からは市町の図書館の所蔵資料も合わせて公開したことも大きい」と、デジタル化を担当する同館の大澤優太さんは分析する。
公開中のものはすべて著作権フリー。ネット時代の著作権ルールを定めた「クリエイティブ・コモンズ」で「CC0」とし、商用も含めて自由に二次利用ができる。
これまでに高崎経済大観光政策学科が出版した群馬のガイド本や、JR前橋駅前の郷土史展示施設「ヒストリア前橋」で活用された実績がある。富岡製糸場の錦絵や、赤城山のレトロなはがき絵などの画像を、布やパッケージにデザインして商品化することも可能だという。
岩瀬春男・特別館長が注目するのは、市町村図書館の所蔵品だ。「地域の魅力を売り出すものとして使える可能性がある」として、「商業利用も含めて活用していただければ、地域経済の活性化にも役立てられる」と指摘する。
現在、県内の図書館・図書室のうち、デジタルライブラリーに参加する施設は全体の4分の1。今後、参加数や収蔵点数を増やしていく考えだ。すでに10年計画で、中島飛行機の創始者で政治家の中島知久平氏の「中島文庫」(県立図書館所蔵)など、「ここにしかない」もののデータ化が始まっている。
スマホの普及などで進む「紙離れ」。ただ、土橋徹館長は「紙への一定の需要はある。紙、デジタルのどちらかではなく、バランスのよい共存を目指していければ」と話す。
デジタルライブラリーは県立図書館のホームページからアクセスできる。