平成筑豊鉄道「今後を考える場を」 沿線自治体に法定協要請

岩田誠司 田中久稔
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 福岡県の筑豊地域と京築地域を結ぶ第三セクター、平成筑豊鉄道(本社・福岡県福智町)が28日、今後の鉄道事業や地域の公共交通のあり方について話し合う場を設けたいとして、沿線の自治体に法律に基づく法定協議会の設置を要請した。設備更新などで多額の赤字が続く見込みとなったことが背景にあり、同社は「現実的な移動手段は何が適当かを含めて議論し、いい方向性を出したい」という。

 この日開かれた株主総会で、田川市直方市行橋市など沿線の9市町村の首長らに、法定協設置を要請した。

 株主総会で発表された2023年度決算では、利用客が前年比3万6千人増、旅客運賃収入も1200万円増。いずれも2期連続で改善したが、コロナ禍前の水準の8割程度だ。

 枕木の老朽化などに伴う修繕費もかさみ、営業損益は5億1890万円の赤字で、営業赤字は27年連続となった。沿線市町村からの経営安定化助成金のほか、国や県からの補助金など計5億8700万円の支援を受けているが、純損益も前期より5459万円悪化し、5807万円の赤字となっている。

 株主総会後に記者会見した同社の河合賢一社長は、現状分析と今後の収支シミュレーションの結果、無線やレールなどの設備更新などで年間約10億円の赤字が継続的に発生する見込みとなったこと、26年以降は沿線市町村に現在の3倍以上の助成金をお願いすることが必要となる見通しを明らかにした。

 また、人口減少や、災害の頻発もあって、経営を巡る厳しさは「質的にも一段と変わってきた」と述べ、法定協設置への協力を呼びかけた。

 総会に出席した行橋市の工藤政宏市長は「現状、今後の見通しを考えた場合、この地域全体で鉄道のあり方を検討していくことは避けては通れない」とコメントを出し、法定協設置の方向で協議していく意向を示した。

 平成筑豊鉄道は、日本最大の産炭地だった筑豊地域から石炭を運ぶため1893年以降に順次敷かれた伊田線、田川線、糸田線の各線をJR九州から引き継いで1989(平成元)年に第三セクターとして開業した。九州最古の鉄道トンネル「石坂トンネル」やレトロな駅舎など、歴史を感じさせる沿線の風景がファンに人気だが、輸送人員は90年代前半の342万人をピークに減少傾向が続いている。

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この記事を書いた人
岩田誠司
西部報道センター|筑豊地区担当
専門・関心分野
南米、外国人労働者、農業、食、災害、環境、平和、教育