高卒は引く手あまた 求人倍率は10年で最高に 初任給も急上昇

有料記事

渕沢貴子

 来春の高卒者向けの求人が7月1日に解禁された。人手不足が深刻化するなか、高卒人材は引く手あまたになりつつある。今年3月の九州・山口各県の求人倍率は、いずれもここ10年で最高になった。

 「本俸を25%引き上げました。休みも取りやすい職場です」

 5月、佐賀県であった企業と各高校の進路指導担当教員との情報交換会。佐賀市の障害者福祉施設長の女性は、資料を示しながら熱心にアピールしていた。「パートも優しい方がいっぱいいて、全体的に雰囲気が良い。自信を持ってお薦めしたい」と職場環境も忘れず強調した。

現場の半分は60代以上、20代の日本人は1人だけ…悩む企業

 同施設は正職員6人のうち、最も若い30代が1人で、多くは60代以上だという。取材に、「ずっと大卒しか採用していなかったが、昨年高卒者の給与規定も定めた。次の世代を担う人に来て欲しい」と話し、次の高校との面談を待った。

 城島建設(佐賀市)の藤松幹男社長は、建築デザイン科などがある市内の北陵高のブースに座り、「若いやる気のある人に来て欲しい」と訴えた。従業員は約25人。「技能実習生など外国人が5人いるが、日本人で20代は1人だけ。若返らせないと」。池田建設(同市)の営業担当者は取材に、「現場に出る人の半分は60代以上で、若い人に来てもらいたい。だが、繁忙期があるし、天候にも左右される仕事。土日休みにしたくても難しい。一番の課題です」と悩みも打ち明けた。

 情報交換会は佐賀労働局が5月中に県内2カ所で開催。佐賀市の会場には県内の10校がブースを設け、60事業者が7分交代で次々に面談した。ここ2年高校に求人を出していない事業者を対象に参加を募ったところ、83事業者から応募があったという。製造業、建設業、運送業、医療、福祉、郵便などと業種は様々だ。

 一方、高志館高(同市)の進路指導担当者は、「高校生が重視するのは休み。休日に友達と遊びにいきたいから、他と休みが合わないと難しい」と今時の高校生の就職指向を説明する。

求人数は450から1600に 10年で様変わり

 進路指導歴が長い佐賀工業高の男性教員は「大企業の名前を冠した地元のグループ会社や地元の大手企業が人気で、先輩がいる会社に行く生徒が多い」。10年ほど前は求人が450ほどだったが、最近は生徒に情報提供している分だけで1600にのぼる。

 「昔は生徒が希望する会社が…

この記事は有料記事です。残り1843文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません