第1回YOASOBIの歯車が動き出す 帰り道が一緒になった他部署の2人

有料記事YOASOBI 仕掛け人たちの楽屋裏

岩沢志気

YOASOBI 仕掛け人たちの楽屋裏①

「小説を音楽にする」というコンセプトで活動する2人組ユニットYOASOBI。昨春配信した「アイドル」は国際的な音楽チャートで1位を獲得しました。そんな国内外での活躍の陰には、結成時から2人を支えてきたスタッフたちがいます。その楽屋裏に迫りました。=敬称略

 2019年1月。ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の屋代陽平と山本秀哉は社員20人ほどが参加した飲み会の帰り道、たまたま2人になった。入社7年目の同期だったが、部署は別々で、顔を合わせるのは久しぶりだった。

 お互いどんな仕事をしているのか、という話になった。屋代は小説投稿サイトを手がけ、山本はグループ内の音楽レーベルでアーティストを担当していた。

 それぞれ仕事の中核を担い始めていたが、壁にぶつかってもいた。短い時間だったが話をする中で、協力し合えることがあると感じ、後日あらためて会おうと約束した。のちにYOASOBIの「生みの親」と呼ばれる2人の間で、歯車が動き出した瞬間だった。

 当時、屋代が17年に立ち上げた小説投稿サイト「monogatary.com」は苦戦していた。「平凡男子とマドンナ女子」「タイムリープのある物語」などお題を決めて小説を公募し、優秀作を出版したりアニメにしたりして収益化を図る事業だ。

 だが開始から1年余り経ち、書籍化した小説はあったが、大ヒットといえる作品は生まれていなかった。屋代は「ユーザー数も作品数も想定していた数字に至らず、このままだとミラクルが起こらないことにはなかなかビジネスとしては難しいと思っていた」と振り返る。

 そこで新たに考え始めていたのが、自社のレコード会社としての強みを生かした「小説を音楽にする」プロジェクトだった。

 2人は飲み会の日から間を置かず、東京・市ケ谷のSMEが入るビルのカフェで向き合った。

 屋代は自分の構想を説明した。「賞を設けて小説を募集し、受賞作品に曲をつける。MV(ミュージックビデオ)もつくろうと思っている」。そのうえで、音楽事業を担当し、日々アーティストともやりとりをしている山本に、プロジェクトに携わってくれないかと持ちかけた。

 山本は即決で、話に乗った。「新人アーティストを売り出す際にお金をなかなか確保できない。MVをつくるのもなかなか大変。『賞』として予算を組んであるなら、よい作品をつくれると思った」

 曲をつくるアーティストは2人組のユニットにすることにした。山本は「曲をつくる人間(コンポーザー)と、歌う人間が必要だよねという話になり、まず曲をつくる人を決めた方がいいということになった」と話す。

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連載YOASOBI 仕掛け人たちの楽屋裏(全3回)

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