人権団体が告発するイスラエル軍基地内のパレスチナ人収容所の実態

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Patrick Kingsley, Bilal Shbair/The New York Times 抄訳=荒ちひろ/朝日新聞GLOBE編集部

Inside the Base Where Israel Has Detained Thousands of Palestinians

 その男性たちは手錠をかけられ、目隠しをされ、金網の向こう側から彼らを見張るイスラエル兵の姿を見ることができない状態で、並んで座っていた。

 彼らはささやき声ですら話すことを禁じられ、許可なく立つことも寝ることも禁じられていた。

 何人かはひざまずいて祈りをささげていた。一人は救急隊員の検査を受けていた。別の一人は、体を洗うために一時的に手錠を外すことを許されていた。他の数百人のパレスチナ人収容者は、無言で座っていた。彼らは皆、外の世界から遮断され、何週間もの間、弁護士や家族と連絡を取ることを禁じられていた。

 これが、ガザ地区からパレスチナ人を拘束することの代名詞となっているイスラエル南部の陸軍基地、スデ・テイマン内の軍用格納庫での、ある5月下旬の午後の光景だった。イスラエル軍によれば、昨年10月7日に戦闘が始まって以来、ガザで拘束されたパレスチナ人のほとんどが、最初の取り調べのためにここに連れてこられたという。

 これまでメディアの立ち入りを認めてこなかったイスラエル軍は、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)に対し、この収容施設の一部を短時間取材し、匿名を条件に司令官らへのインタビューすることを許可した。

 かつて目立たない兵舎だったスデ・テイマン基地はいま、仮設の尋問施設となり、後にハマスや他の武装集団とは無関係だと判断された人々を含む収容者たちを、イスラエル軍が虐待してきたという告発の主要な焦点となっている。インタビューでは、過去に拘束されていた人々が、この施設で受けた暴力やその他の虐待について述べている。

 施設の司令官らが取材に語ったところによると、5月下旬までに、昨年10月のハマス主導によるイスラエルへのテロ攻撃でとらえられた数十人を含む、およそ4千人の収容者がスデ・テイマンで最長で3カ月間、勾留された状態におかれていた。

スデ・テイマン基地内の収容所に拘束されたガザ地区のパレスチナ人たちは、どのように拘束されたのか。収容所内部の状況は。どのように尋問が行われたのか――。解放された元収容者やこの基地で働くイスラエル側の関係者らが、NYTの取材に語りました。

 尋問の後、約70%の収容者…

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