茶封筒の中に「闇をあばいて」 県警の内部文書受けたライターの悔恨

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小川裕介

 「何らかの信頼があって、送ってくれた人には申し訳ない。もし(ウェブメディアに)送っていなければこんなことにはなっていなかったわけだから。ガサ(家宅捜索)の不当性に腹が立つし、いろんな憤りがある」

 鹿児島県警の前生活安全部長が、第三者に内部文書を漏らしたとして国家公務員法違反(守秘義務違反)の疑いで逮捕された事件。前部長から内部文書を郵便で受けとった札幌市のライター小笠原淳さん(55)は、そう悔恨を吐露した。

 県警は4月8日、元巡査長=懲戒免職=が内部書類を漏洩(ろうえい)したとされる別の事件で、福岡市のウェブメディア「ハンター」の関係先を捜索した。その際に前生安部長が小笠原さんに送った文書を押収したとみられる。

突然の捜索、守れなかった取材源

 小笠原さんは捜索の5日前、数年前から寄稿してきたハンター側に文書をメールで転送していた。県警はその後の捜査で、前生安部長の本田尚志容疑者(60)が小笠原さんに文書を送ったと特定し、逮捕に踏みきった。

 誰が記者に情報をもたらしたのかを明らかにしない「取材源の秘匿」は、記者の最高倫理とされる。最高裁は2006年、取材源の秘匿について「取材の自由の確保のために必要なものとして重要な社会的価値がある」とする初判断を示している。

 小笠原さんは、札幌市に拠点を置く月刊誌「北方ジャーナル」で警察の不祥事などを連載し、これまでも警察内部から告発文書を受けとってきた。県警の捜索によって、結果として取材源を守れなかったことに話が及ぶと、苦渋の表情を浮かべてこう語った。

 「我々にとっては(自分が)…

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この記事を書いた人
小川裕介
西部報道センター|事件キャップ

核・原子力、感染症、事件、調査報道

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2024年6月21日22時35分 投稿
    【視点】

    これは重大な事態。古典的な「権力組織の横暴」として許してはならないだけでなく、警察と政府の正統性を大幅に下げる。 日本の警察は、人口比に対する人数が多いわけではなく、国際的にみればむしろ少ない部類である。警察の正統性が下がり、市民社会の協

    …続きを読む
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    西岡研介
    (ノンフィクションライター)
    2024年6月22日13時26分 投稿
    【視点】

    小笠原さんのいう通りだ。が、「批判」だけでは足りない。鹿児島県警、警察庁をはじめとする〝警察一家〟は間違いなく、本部長の首を飛ばすことによって、今回の、民主主義社会の根幹を脅かす暴挙の幕引きを考えている。  ここはひとつ、メディアの大小、組

    …続きを読む