「聞こえない人」歓迎のカフェ 発端はバイト面接「12回も落ちた」

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足立朋子

 聴覚に障害がある若者らが働くカフェバーが、JR平塚駅近くのビルの2階にオープンした。立ち上げたのはダンサーで、神奈川県平塚市を拠点に手話ダンスを教える北村仁さん(41)。きっかけは、教え子がアルバイトの面接に「12回も落ちた」ことだったという。

 同市紅谷町に6月、本格オープンした「UD Cafe&Bar -te to te-(ユーディーカフェ&バー テトテ)」。

 「UD」はユニバーサルデザインのことで、耳の聞こえる人、聞こえない人が自然につながる場になることをめざす。

 手話ができる澤下耀さん(32)を店長に、聴覚障害のある4人の若者がスタッフとして働く。20席ほどの店内は、手話や筆談ボードなどで注文する客でにぎわっている。

 北村さんは、ストリートダンスに手話表現を採り入れた独自の「UDダンス」の提唱者で、かつて同市のダンスチームに加わって渡米し、NYのアポロシアターで好評を博したこともある。

 チームを離れた後、市の財団の講座でダンスを教えたところ反響が大きく、2019年に駅前にスタジオを借り、スクールを始めた。現在は東京と平塚で約60人を教え、コロナ禍で始めたオンラインの受講者も全国に約170人いる。豊かな表情が持ち味のUDダンスを学ぶのは、7割が聞こえる人という。

 そんな北村さんが、畑違いのカフェをつくろうと思い立ったのは、22年の夏。当時、県立平塚ろう学校高等部に通っていたスクール生、古川天斗(たかと)さん(18)との会話で、古川さんが飲食チェーン店などのバイト面接に12回連続で落ち、1年近く決まらずに悩んでいることを知った。

 驚いて、ほかの生徒たちに聞いても同じ状況だった。同じ面接を受けても、聞こえる子だけが採用され、働けても親族が経営している店などがほとんど。また、やっと面接を突破しても、職場に聞こえないことへの配慮がなく、孤立して続かなかった生徒もいた。

やっと面接を突破しても…

 「バイト先がないなら、自分…

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この記事を書いた人
足立朋子
湘南支局長

保育・教育 労働、子どもの権利