高橋まつりさんの後輩だった息子、5年後に 減らない過労自殺

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楢崎貴司 北川慧一 編集委員・沢路毅彦

 「電通社員の自殺 労災認定」。2016年10月、顔写真とともに大きく報じられた。

 「知っている人なんだ。ラクロス部で1年先輩だった」。横浜市の女性は、大手ゼネコン清水建設に就職したばかりだった長男の言葉を鮮明に覚えている。

 亡くなったのは高橋まつりさん(当時24)。東大在学中、男子ラクロス部のトレーナーだった。

 まつりさんは月105時間に上る時間外労働をし、入社1年目の15年に社員寮で自殺した。会見した母親の幸美さん(61)は「過労死を繰り返さないで」と語っていた。女性は「勇気があるな」と思った。

 まつりさんの死は、長時間労働が染みついた社会に衝撃を与えた。幸美さんは全国各地で講演を重ね、「会社にあなたの代わりはいても、あなたの人生の代わりはいません」と訴えてきた。

 しかし、過労自殺は大きくは減らなかった。21年、女性の長男は社員寮で自ら命を絶った。29歳だった。

 「まつりさんのように仕事が…

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この記事を書いた人
北川慧一
経済部|労働キャップ
専門・関心分野
労働政策、労働組合、マクロ経済
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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年6月19日7時41分 投稿
    【提案】

    記事中にある高橋まつりさん、清水建設の方だけでなく、東芝系の企業で働いていた安部真生さんも含め、東京大学の卒業生で過労自殺で亡くなった方は何人もいる。憂慮した東京大学では、ご遺族のご協力も得て、全学生向けのワークルール教育を、動画と独自テキ

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  • commentatorHeader
    西田亮介
    (社会学者・日本大学危機管理学部教授)
    2024年6月19日8時36分 投稿
    【提案】

    過労死が社会問題化し、過労死防止法ができてからも、過労死こそ2000年水準程度まで減少してきたが労災認定の件数自体は減少していない。未だに様々な不適切な労務管理が日本社会に蔓延していることが一因と思われる。労働基準監督署を中心により厳しく、

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