県北農林事務所は工事中止を指示、本庁が覆す 福島のメガソーラー
福島市の先達山で建設が進む大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の造成地から大量の泥水が流れた問題で、福島県の県北農林事務所が事業者に対し、工事中止の指示をいったん出しながら、本庁の農林水産部からの指摘を受けて撤回していたことがわかった。県と福島市の複数の関係者が明らかにした。
県などによると、2日の局地的な豪雨の影響で、このメガソーラーの造成地から出た泥水が沢伝いに流れ、高湯温泉につながる県道70号の道路上にあふれ出た。車で通行した近くの住民によると、道路が川のようになっていたという。事業者が土囊(どのう)を積むなどして応急対応した。
県北農林事務所の担当者らが4日に現地調査をし、東京の事業者を5日に事務所に呼んで事情を聴いた。それを受け、農水部は5日、報道各社に対し、事案の「概要」「調査結果」「対応」をまとめた「県道福島吾妻裏磐梯線における泥水流出について」との文書を発表した。
「調節池へ水を集めるための仮設水路(土側溝)が閉塞(へいそく)したことにより、周辺の水が沢に流出したことが原因と確認された」「2日に事業者が、排水機能の拡充のため応急措置として、排水路の掘り直しを実施しているため、その後の降雨による直接流出はない」「なお、事業者に対し、災害発生時の速やかな報告の徹底と適切な開発の実施を指導する」といった内容だ。
関係者によると、県の林地開発許可制度実施要項に記されている「違反行為に対する措置」として、県北農林事務所が事業者に工事の中止を伝えたのは4日。森林法に基づき、知事から林地開発許可を得た際の申請書類で、造成地外に水が流れないための対策を記していたが、今回機能していなかったこと自体が違反に当たると判断した。
工事中止の指示後、事業者から復旧計画と今後の対策についての計画書の提出を受け、農林事務所で内容を了承した場合、工事が再開される手続きになっていた。こうした「決定」は、地元の福島市にも4日に連絡された。
しかし、農水部が4日に農林事務所に「再検討が必要」と求め、事業者への決定を撤回したという。結局、判断は本庁で行い、違反には当たらないとし、事業者へは「報告の徹底と指導」にとどめた。
県の担当者は「計画された排水設備を事業者が作っていなかったという話ではない。想定外の雨が降ったから、流出が起きた。仮に工事の中止指示を出したところで、事業者は対策済みなので、出す意味がない」と説明する。
ただ、福島市の関係者は「本来、起きてはいけないことが起きた。『業者の対応が甘かっただけで、今後問題は起きない』と言われても、住民は納得できないのではないか」と県の対応を疑問視する。
県の実施要項では「開発行為者は災害が発生した場合、遅滞なく災害発生届出書を知事に提出しなければならない」と定めているものの、農林事務所に事業者から連絡があったのは、翌日の3日になってからだったという。農林事務所は、この点も問題だとしていた…
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