接近も拒絶も極右を利する? 欧州「防疫線」戦略が抱えるジレンマ

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あすを探る 板橋拓己さん

 6月6日から9日にかけて欧州議会選挙がおこなわれるが、話題はもっぱら、極右ないし急進右翼政党がどこまで躍進するかに集中している感がある。オランダの政治学者ミュデに従えば、「極右(far right)」とは、自由民主主義の根幹である多様性を否定し、マイノリティーへの差別や移民排斥などを主張する勢力である(極右政党にも色々なバリエーションがあるが、ここでは立ち入らない)。

6人の論壇委員が交代で執筆するコラム「あすを探る」。今月の筆者は国際・歴史担当の板橋拓己・東京大学教授です。

 極右政党が欧州諸国で定着してすでに久しく、近年では政権参加や閣外協力を果たす「主流化」も見られる。直近では昨年11月のオランダ下院選で、ムスリムへの敵意をあおってきた自由党が第1党となり、連立政権に参加することが今月決まった。

 第2次世界大戦後の欧州では長い間、既成の主要政党が、極右と一切の関係を絶ち封じ込める戦略を選択してきた。「コルドン・サニテール」(仏語で「防疫線」)や「防火壁」と呼ばれる戦略だ。しかし世紀の変わり目あたりから、伸長する極右に対して防疫線を維持するのは困難になってきた。

 こうした状況に対し、保守や…

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    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2024年5月30日7時0分 投稿
    【解説】

    AfDが「主流政党」たちからこうもハブられながら、なぜ常に政治的脅威として筆頭に挙げられるのかといえば、ドイツで通常、極右政治活動には身を投じない教養層のメンバーが多く参加しているからだ。ゆえに「政権獲得可能性が著しく低い」といえど、伝統社

    …続きを読む