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公的年金制度のほころび顕著 27年間の米軍統治が沖縄に残した影

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上地一姫

 日本復帰から52年を迎えた沖縄で、年金制度というセーフティーネットのほころびが顕在化している。27年間の米軍支配の影響が、復帰から半世紀以上が過ぎた今も沖縄社会に傷を残す。

 4月中旬、那覇市の観光名所・国際通りに近い公園。大きなバッグをもった約80人の女性たちが長い列をつくっていた。

 多くが高齢者。シートの上に並べられた米やパン、インスタント麺、レトルト食品、菓子などを手に取っていく。

 那覇市を拠点に活動するボランティア団体「ゆいまーるの会」が、女性向けに月2回行う食料の無償配布だ。持ち帰りは1人3個まで。米など日持ちする主食はすぐになくなる。

 赤い手押し車を押して来た女性(85)は、インスタント食品などを受け取った。「恥ずかしいと思わなくていいよ、と誘われたので来た。今回で3回目」という。

 市内で独り暮らし。元夫は、2人の娘が幼い頃に帰ってこなくなった。清掃の仕事、飲食店の皿洗い――。本土復帰前の沖縄で、サービス業を転々とした。

 子どもたちを育て上げ、80歳まで働いた。ずっと日々の生活で精いっぱい。33歳の時に沖縄が日本に復帰し、本土と同じ年金制度ができたけれど、保険料の納付免除の手続きを何度もとった。

 月々の年金は数万円。「食料の配布があると少しだけ楽になる」と笑う。

 物価がどんどん上がる中、も…

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この記事を書いた人
上地一姫
東京社会部

沖縄・平和

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    木村司
    (朝日新聞社会部次長=沖縄)
    2024年5月15日12時38分 投稿
    【視点】

    高齢者の生活困窮はもとより、子どもの貧困、低所得や高失業率など、当たり前の日常を送るための重要な課題が、日本全国と同様、沖縄にもあります。ただ、沖縄では全国に比べ、深刻な状態にあります。 米軍人をトップとする米国施政権下に埋め込まれたもの

    …続きを読む