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有価証券報告書「株主総会前に開示」 金融庁検討、先行わずか33社

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堀篭俊材 宮脇稜平
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 金融庁は、定時株主総会の後に提出されることが多い有価証券報告書(有報)について、総会前の開示を促すことを検討する。海外投資家の要望にこたえ、海外マネーの呼び込みにつなげたい考えだ。企業の負担を軽くするため、別の開示資料と一体的に作成することを進めるなど環境整備に乗り出す。

 有報には業績推移や経営方針のほか、直面する課題やリスク、企業統治体制やサステイナビリティー(持続可能性)に関する情報など、投資判断の材料となる情報が多く盛り込まれている。

 金融商品取引法金商法)では有報は事業年度後3カ月以内に、各地の財務局などを通じ首相に提出する決まりがあるだけで、早めに提出・開示することはできる。だがEY新日本監査法人の調査では、2023年3月期決算の上場企業2325社のうち、8割以上が有報を定時株主総会と同じ日か翌日に提出しており、総会前に提出したのは33社、全体の1.4%にとどまる。

 議論のきっかけとなったのは4月3日、首相官邸に株式市場の関係者たちを招いて開かれた意見交換会だった。席上、海外の機関投資家たちでつくる「国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク」の幹部らが総会前の有報開示を要請。欧米では、有報にあたる年次報告書を株主総会の1カ月以上前に開示する企業が一般的だという。岸田文雄首相は「企業と投資家の一層の対話促進に向けて、金融庁を中心に環境整備を進める」と表明した。

 だが、企業側の反応は複雑だ。決算日から株主総会までの間には、会社法で定められた株主総会に提出する事業報告書や計算書類の作成作業も重なるほか、決算発表に備え決算短信をつくる必要もある。有報には気候変動対策や人的資本経営などへの取り組みなど、非財務情報も盛り込まれるようになり、現場の負担感は増している。

 欧米では開示ルールを定める…

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