森の詩人が暮らした神秘の四尾連湖 今はキャンプで人気の「聖地」に

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三宅範和
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 「四本の尾を連ねた竜がすむ」のがその名の由来という、山上にたたずむ神秘の湖。かつて、湖畔の丸太小屋で自炊生活をしながら詩を作り続けた男がいた。

 山梨県旧一宮村(現・笛吹市)に生まれた野沢一(1904~45)は、「森の生活 ウォールデン」を著して自然の一部として生きることを説いた米国の思想家ヘンリー・ソロー(1817~62)に感化され、卒業直前だった法政大学を中退。1929(昭和4)年に四尾連湖(しびれこ)畔(市川三郷町)に移り住み、約5年暮らした。作品は詩集「木葉童子(こっぱどうじ)詩経」にまとめられ、詩人・高村光太郎が序文を寄せている。湖畔の森の中で詩作し、自然との合一を志向する作風から「森の詩人」と呼ばれている。

 湖畔から、エメラルドグリーンの湖水のきらめきを左手の樹間に見ながら登山道を15分ほど歩くと、野沢の文学碑に着く。

 「とこしえに しびれの湖と たたえられてあれよ」。碑に刻まれた詩を詠じた頃と、湖の姿はそんなに変わってはいないだろう。

豊かに何もない場所

 東京在住の詩人で日本詩人ク…

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