同性カップルの「名字統一」に評価と懸念 根本解決への2ステップ

 愛知県内に住む30代男性が、30代の同性パートナーと戸籍上同じ名字に変更することを求める審判を名古屋家裁に申し立て、変更が認められたことがわかった。鈴木幸男裁判長は2人の生活実態を「婚姻に準じる関係」とし、名字が異なることで意に沿わないカミングアウトをしなければならない状況が生じることが「社会生活上の著しい支障」にあたると判断。戸籍法上の「やむを得ない事由」に相当するとして変更を認めた。

 今回の名古屋家裁の審判は、当事者にとって、追い風になりそうだ。

 「僕らの訴訟にも必ず前向きな影響がある」。同性婚の実現をめざす「同性婚訴訟」福岡訴訟の原告の一人、こうぞうさん(41)=熊本市=はそう語る。

 こうぞうさんを含む同性カップルの6人は2020年3月、福岡地裁に同性婚を認めない民法などの規定は「憲法違反」だとして提訴した。「違憲状態」とした地裁判決を不服として控訴審で争っている。

 こうぞうさんはこれまでもメディアに出るなどして同性婚実現を訴えてきた。日常生活でそれぞれ本名を使い、大きな影響はないが、「まだ、日本には同性カップルと言わずに生活している人が多くいる。病気や事故で大変なときに、不本意にカミングアウトをしなければならない場合もあり、相当な心労がある」と現状を指摘する。

 今回の審判は2人が婚姻に準じる関係であると認め、異性カップルと同質の法的保護を与えることは社会観念上許容される、とした。「司法の中ではすごいスピードで、(司法判断が)ブラッシュアップされている」

 一方、「まだ日本では、法律婚では認められている権利や制度について、個別に訴訟や申し立てを起こさなければならない」とし、早期の同性婚の実現を望む。

「親子の関係性に疑念もたれるかも…」常に抱える怖さ

 「子どもを育てる同性カップルが日常的に直面する不都合を挙げればきりがない。名字を変更しなくとも、そうした家族の存在が普通に受け入れられる社会であってほしい」

 そう語る性的少数者の権利を…

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    岩尾真宏
    (朝日新聞名古屋報道センター長代理)
    2024年5月9日20時19分 投稿
    【視点】

    「そもそも同性婚が認められていないことが大きい」「選択的夫婦別姓の観点も必要ではないか」「国の動きの現状はどうか」――。愛知県内に住む30代男性が、30代の同性パートナーと戸籍上同じ名字に変更することを求める審判を名古屋家裁に申し立て、変更

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