精神障害、なお残る差別条項 「今どきこんな表記が」職員も気付けず

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酒本友紀子

 精神障害があると庁舎に入れず、議会の傍聴もできない――。そんな条例や規定が、今も行政機関に残されている。表立った実害は報告されていないものの、障害者差別解消法に抵触するとして各地で見直しが進む。条例や規定の存在に職員らが気づかず、放置されてきたケースもある。

 同法は障害を理由とする不当な差別を禁じている。精神障害当事者らでつくる「心の旅の会」(浜松市)が、ネットで公開されている自治体の例規集から、精神疾患や障害を理由に施設の利用などを制限する条項の有無を調べた結果、2022年は460件見つかった。

 同会の指摘を受け、文部科学省は「不適切」として23年1月に、総務省は「障害者差別解消法に違反する」として同年9月に、自治体宛てに規定の見直しを通知した。

 同会は昨年12月~今年1月末にも再調査。一昨年より数は減ったものの、266自治体と44広域行政機関で333件の条項が確認された。内訳は教育委員会の傍聴が85件、庁舎の利用が53件、議会の傍聴が43件など。公民館や公園、プールのほか、歴史資料館といった文化施設でも利用制限があった。

 調査対象を広げたところ、88自治体の保育施設の設置条例などに、子どもの「精神病や悪癖」を理由に利用を制限する規定があることが新たに判明。同会は3月、こども家庭庁に撤廃を要請した。

精神障害を理由に議会の傍聴や公民館の利用などを制限する条例や規定が、今も行政機関に残されています。差別的な条項がなぜ放置されてきたのでしょうか。担当者に取材しました。

 「今どきこんな表記が残って…

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    永田豊隆
    (朝日新聞記者=貧困、依存症、社会保障)
    2024年5月9日23時7分 投稿
    【視点】

    例えば、議会を傍聴できない者として「女性」「身体障害者」「子ども連れ」があげられていたら、どうでしょうか。調査で判明した条例や規定は理由なく精神障害者を排除するもので、明白な差別です。 そこに通底するのは精神障害者を危険視する考え方ですが、

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