投信の「不毛な戦い」に終止符を もうからない金融業界への処方箋

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聞き手・山本恭介

 日経平均株価などの指数に連動した値動きをめざすインデックス投資信託は、手数料(信託報酬)が商品選びのポイントです。その信託報酬の引き下げ競争を勝ち抜き、低コスト投信として知られるのが、三菱UFJアセットマネジメントが開発した「eMAXIS Slim」(イーマクシススリム、以下Slim)です。ただ、金融機関に資産運用の助言をする日本資産運用基盤グループ社長の大原啓一氏は、行き過ぎた価格競争の弊害を指摘します。

 ――Slimなどの低コスト投信の広がりをどのように見ていますか。

 「1月に新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、日米の株価が過去最高値を更新するなど、生活者に資産形成の意識が根付き始め、熱気が高まっています。個人投資家にとって手数料が低い投信の存在は重宝され、それを後押ししていると思います」

 「ただ、資産運用会社をはじめとする金融機関が本当にそれで良いかといえば、必ずしもそうではないと思います。数年前から投信の手数料はどんどん下がってきています。商品が乱立する中で、似た商品も多いので価格の下落圧力は仕方ない面もあります。残念なのは、資産運用会社が過度な手数料引き下げ競争に走ったことです」

 ――何が問題なのでしょうか。

 「金融機関側が『顧客本位』…

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この記事を書いた人
山本恭介
経済部兼国際報道部兼デジタル企画報道部|銀行担当
専門・関心分野
資産形成、社会保障、労働政策
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    磯野真穂
    (東京工業大学教授=応用人類学)
    2024年5月6日8時27分 投稿
    【視点】

    30代に始めてよかったと思うことの一つに投資があります。ずっと非正規だったこともあり、少額投資を細々続けていただけですが、この期間のおかげで、未だ初心者ながらも投資の身体感覚を身につけることができた気がします。 ただ私が幸運だったと思うの

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