届かない救済、国との溝が埋まらぬまま…水俣病公式確認から68年

今村建二
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 「公害の原点」とされる水俣病が公式に確認されてから1日で68年を迎えた。患者の高齢化が進む一方、今なお被害の救済を求める訴訟が続く。この1年で新たな患者の存在を認める複数の司法判断が示されたが、国は救済に後ろ向きなままだ。

 この日は熊本県水俣市で午後から慰霊式があり、患者や遺族、伊藤信太郎環境相、加害企業チッソの木庭竜一社長のほか、4月に就任した木村敬・熊本県知事も出席した。

 これまで3万3128人が水俣病の患者認定を申請したが、認定されたのは2284人。うち2055人が亡くなり、存命の229人の平均年齢は80・4歳(いずれも3月末現在)。

 高齢化が進み、介護を必要とする患者が増えるが、半世紀前にできた補償の仕組みでは福祉への支援は十分ではなく、改善を求める声が強くなっている。

 水俣病はもだえ苦しむ「劇症型」のイメージが強い。そのため自分の症状と結びつかなかったり、差別を恐れたりなどで、被害を訴えられなかった人たちが数多くいる。認定から漏れた人も含め、水俣病と認めて救済するよう求める声も依然として大きい。

 国が「最終解決」をうたった水俣病被害者救済法(特措法)でも救済されなかった被害者が償いを求める裁判が全国4カ所で続く。大阪(2023年9月)、熊本(24年3月)、新潟(同4月)の3地裁判決では、賠償金支払いについての判断は割れたが、救済されていない患者の存在をいずれも認めた。

 原告・弁護団は新たな救済策づくりに向けた話し合いを呼びかけているが、国は応じる姿勢を見せていない。(今村建二)

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