ひょうたん島の町に花の苗プレゼント 復興願う11年の支援に幕

小幡淳一
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 これが最後のお花です。これまで本当にお世話になりました――。

 東日本大震災で被災した岩手県大槌町の復興を支援したいと、花の苗を贈り続けてきた二戸市米沢の農業、高村英世さん(83)と民子(みんこ)さん(80)。11回目になる今年もパンジーとビオラの苗計420本を無事に送り届けた。

 年を重ねて負担が大きくなり、今年で最後になるが、色とりどりの花々が春の大槌町を彩っている。

 4月22日午後1時過ぎ、同町小鎚に高村さん夫妻が到着した。ワゴン車には黄色やピンク、赤や薄紫の花の苗が満載。町内で花を植える活動をしている「おおちゃん花くらぶ」の阿部智子さん(58)が「今年もきれいなお花がいっぱい。もう感謝しかありません」と笑顔を見せた。

 「芸術家肌」という英世さん。中学卒業後は農業をしながら、人形芝居を研究するなどして独学で美的センスを磨いた。大槌湾に浮かぶ蓬萊島をモデルにしたとされるNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」は特にお気に入り。「夢の世界で感銘を受けた」と話し、1960年代には民子さんと毎回放映を楽しみにしていたという。

 ところが、2011年の震災で大槌町は甚大な被害を受け、大好きな風景は一変した。「テレビや新聞で惨状を知り、涙があふれてきた。もう、言葉にならなかった。ただただ、悲しんでいた」

 何か支援をしたいと考え続けていたところ、二戸市職員を通じ、阿部さんを紹介され、交流が始まった。高村さん夫妻は花の苗を栽培し、市内で販売しており、国道沿いの花壇に植える苗をプレゼントすることになったという。

 花壇は震災直後、がれきを撤去して整備された。阿部さんは「灰色だった町に少しでも彩りが欲しいという思いで、全国から集まったボランティアの協力で完成した」と振り返る。季節の花々を植えていたところ、高村さん夫妻の苗が加わり、さらに華やかになった。

 高村さん夫妻は秋に種から育て始め、根が丈夫になるように12月ごろに一度植え替える。冬場はビニールハウス内の温度を15度程度に保ち、水やりに気を配る。阿部さんによると、夫妻の苗は葉が元気よく、花が色鮮やかで通常より長持ちするという。

 高村さん夫妻は「年齢的に厳しくなり、寂しい思いもあるが、これまでよく続いてきた。二戸市役所は運ぶのを一緒に手伝ってくれ、大槌町のみなさんは優しくしてくれた。感謝しかありません」と話した。

 高村さん夫妻の苗は国道45号の大槌バイパス南口交差点脇の花壇に植えられている。(小幡淳一)

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