止まらない政治トップの辞任ドミノ 「安定」魅力のベトナムで何が

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バンコク=大部俊哉
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 わずか1年余りの間に、ベトナムの最高指導部のトップ3人が権力の座から姿を消した。政治の不安定化が経済に影を落とす恐れもささやかれる。異例の「辞任ドミノ」の背景には何があるのか。

 4月26日、権力序列4位のブオン・ディン・フエ国会議長(67)の辞任が承認されたことが発表され、国内外に動揺が広がった。1カ月前の3月21日にナンバー2のボー・バン・トゥオン国家主席(53)が辞任したばかりだったからだ。昨年初めにも前任のグエン・スアン・フック氏(69)が任期途中で突然、辞任していた。

 ベトナムは共産党書記長、国家主席、首相、国会議長のトップ4による集団指導体制を敷いているのが特徴だ。党の最高幹部でもあり、一党独裁体制のこの国では絶対的な権力を持つ。

 国家主席だったフック氏が昨年辞任したのは、新型コロナウイルス対策に絡んで相次いだ、汚職事件の引責によるものだ。国家主席が政治的な責任を取って辞任するのはベトナム近代政治の歴史上、例がないことだった。

国会議長の辞任承認の4日前に…

 今年、トゥオン氏とフエ氏の辞任が発表された際は、いずれも国営メディアが「党の規則に違反した」「世論や党、国家の評判に悪影響を与えた」と報じたが、具体的な違反の内容は公表していない。フック氏の件と同様に汚職事件が関係しているのではないか、との観測が広がっている。

 現地メディアによると、今年2月以降、不動産開発大手フックソングループの会長や副社長、中部クアンガイ省の元幹部らが贈収賄や不正入札などの罪で起訴された。トゥオン前国家主席は2011~14年にクアンガイ省トップの党委員会書記を務めていたことから、監督責任を問われたとの見方がある。

 また、フエ国会議長の辞任が明らかになる4日前の4月22日には、公安省がフエ氏の側近を職権乱用の疑いで逮捕したと発表。首都ハノイを拠点とする大手インフラ企業トゥアンアングループが関わる贈収賄事件の捜査の一環だと説明していた。

横領事件で死刑判決も

 これらは、約13年間にわた…

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