クソコラが動かす国際情勢 「猫ミーム」で政治的主張が出回る情報戦

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聞き手・加藤勇介
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 様々な猫の動画や画像を切り取って人の日常生活にあてはめた「猫ミーム」が人気を集めるなど、SNSで話題となることでよく聞くようになった「ネットミーム」。歌やダンスの動画がバズってまねる人が増えるとミーム化したとも言われるが、軍事やネットに詳しいライターの石動竜仁さんは「ネットミームは文化にとどまらず、軍事や国際情勢にも大きく影響している。ネットを使うことは情報戦の一員でもある」と指摘する。

《ミーム(文化的遺伝子)》イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスが1976年に提唱した概念。英語のgene(遺伝子)と、ギリシャ語で「模倣」を意味するmimemeを合成した造語で、生物が遺伝によって子孫に情報を伝えるように、仲間内での模倣行動によって様々な文化情報が伝わることを指す。インターネットを通じて模倣、改変されながら広まる事象をネットミームと呼ぶ。

 ――ミームと言えば「ネットで話題」というレベルに捉えられがちです。軍事や国際情勢というとギャップが大きく感じます。

 「分かりやすい事例だと、最近ではロシアのウクライナ侵攻です。ロシア側もウクライナ側も国際世論を味方につけようと、様々なネットミームを流しています。軍事面では対戦車ミサイルの『ジャベリン』が注目されましたが、聖母がジャベリンを持った『聖(セイント)ジャベリン』と呼ばれる画像がネットミームとなって広がり抗戦のシンボルとなりました。また『NAFO』と呼ばれる親ウクライナ側の勝手連的な集団が、日本のシバイヌの画像をネットミームとして盛んに使っています。ロシア側が拡散を試みる情報に対して、シバイヌの画像を絡めた意味の無い情報を嫌がらせのように大量に送りつけて台無しにしてしまう手法です」

 「同じような手法はネットミームを用いない形でも以前から使われています。ある国の政府に都合が悪い言葉がSNS上でトレンドになると、その言葉に絡めた意味のない画像が大量に投稿されるケースがあります。こうすることで、検索をしても元の情報が何なのかよく分からなくなるのです。今、X(旧ツイッター)ではトレンドとなっている言葉に対し収益目的の投稿がなされる『インプレゾンビ』によって、一般利用者の使い勝手が悪くなっていることが問題となっています。これが、収益目的ではなく情報戦として行われてきた歴史があります。ネットミームを活用した情報戦も大半はくだらないものですが、大量に広がることで意味を持ちます」

 ――日本のネットミームでも同じような事例はあるのでしょうか?

 「2015年、日本人2人が…

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    綿野恵太
    (文筆家)
    2024年4月25日21時55分 投稿
    【視点】

    ロシアは国としてネットミームを作っているというご指摘に、びっくりすると同時に笑ってしまいました(笑いごとではない)。インターネット上の言論で影響力を高めるためにはミーム化は重要。しかし、狙ってミーム化できるほど精度は高くない、といったところ

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    富永京子
    (立命館大学准教授=社会運動論)
    2024年4月26日8時53分 投稿
    【視点】

    社会運動論では、ここでいうミームは「Repertoire(レパートリー)」という概念から分析できるかもしれません。例えばストライキや座り込みといった社会運動の目的を達成する手段が「レパートリー」です。レパートリーは他地域に伝播することでより

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