裏金事件で逆風の自民「沈みかけた船」 補選に立ち向かう一体感なし

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藤原慎一 川辺真改 伊沢健司 小林圭
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 28日投開票の衆院トリプル補欠選挙について20、21両日に行った朝日新聞の情勢調査では、自民党が唯一擁立した島根1区でも野党側がリードしていることがわかった。党執行部は3戦全敗を防ごうと「1勝」をめざすが、裏金事件の逆風は強い。勢いに乗る立憲民主党は失速を懸念し、引き締めを図る。

 島根1区に入る与党議員から漏れるのは、自民が政権から転落した2009年衆院選でも議席を守ってきた地元組織が、初めて直面する逆風選挙への対応力の乏しさだ。

 自民は3補選のうち、東京15区、長崎3区の二つで不戦敗となり、負け越しが確定。与野党一騎打ちの島根1区も苦戦がささやかれるなか、岸田文雄首相や小渕優子選挙対策委員長、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相らが続々と入った。

 選挙区で企業を回った公明党のベテランは、自民支持者が「タレントのような議員がこんなに来るなんて。もう大丈夫じゃないか」と語るのを聞いて驚いた。「島根は保守王国だったし、厳しい選挙に不慣れなんだろう。危機感が薄い」

 関東選出の副大臣経験者は、1996年に初めて小選挙区で行われた衆院選以降、大差で勝ち続けてきた細田博之・前衆院議長を支えてきた後援組織の「勤続疲労」を口にする。「支援者の多くは高齢者。細田氏には旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題が出たし、亡くなった後に政治資金の問題も出た。『もう政治に疲れた。今回は選挙運動はしない』と言う人が多かった」。細田氏は生前、教団との深い関係が指摘された。裏金事件を引き起こした安倍派のかつての会長でもあった。

 細田氏の死去に伴う補選は、地元にとって経験のない逆風下にある。朝日新聞を含む各社の情勢調査で伝えられる自民候補の劣勢をはね返すには、党を率いる首相への信頼回復が不可欠だが、むしろ目立つのは逆風に目をつむるかのような首相の姿勢だ。

首相答弁にざわつく委員会室

 22日の衆院予算委員会。裏…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2024年4月22日23時36分 投稿
    【視点】

    いくつ重なっても補選だろ…と冷めがちな私ですが、今回ばかりは政権が揺らぐとここまでいろいろ見えてくるのかと目が離せません。この記事の焦点である衆院の島根1区では牙城で追い込まれる自民党の窮状があらわですし、終盤に出てくる長崎3区と東京15区

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    星野典久
    (朝日新聞政治部次長)
    2024年4月23日10時46分 投稿
    【視点】

    20~21日に行われた朝日新聞の世論調査でわたしが注目したのは、首相の訪米を評価する声です。裏金問題で窮地に立つ首相が、政権浮揚をかけて臨んだ大一番が、今回の日米首脳会談だったからです。 「岸田首相とアメリカのバイデン大統領が今月、首脳会談

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