小澤征爾さんの足跡たどる 村上春樹さんのラジオ番組で追悼特番

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編集委員・吉田純子
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 村上春樹さんがDJを務める「村上RADIO」(TOKYO FM)が29日、特別編「小澤征爾さんの遺(のこ)した音楽を追って」を放送する。2月に亡くなった盟友でもある指揮者の足跡を、豊富なエピソードを絡めつつ、選び抜いた録音とともに年代順にたどってゆく。

 記者も収録に立ち会った。小澤さんの無類の人なつこさ。ものごとの流れを読み、反応する瞬発力のすごさ。「征爾さんの音楽を聴いていると、そういう彼の優れた面が生き生きと感じられてついうれしくなる」。村上さんはそう語りつつ、小澤さんの人間性に連なるものを演奏の中に探しては、「すごいですね」と楽しげに脱帽する。2人の唯一無二の友情のありようを、形にして示された気がした。

 小澤さんがとりわけ得意としたベルリオーズの「幻想交響曲」とプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」の紹介を通じ、音で物語を紡ぐ小澤さんの「秘技」のありかへと、村上さんの探究心はぐいぐい分け入る。

 自身の小説「1Q84」の幕開けで重要な役割を担うチェコの名匠、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」にも話は及ぶ。ある時代、および土地の空気を同時に複層的に差し出せる音楽の力を得て、村上さんの言葉がみずみずしい肉感を携えていったプロセスが目に見えるよう。「1Q84」が、村上さんと小澤さんという2人の希代のストーリーテラーによる精神の共同作業であったのだと、あらためて思い知らされる。

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