27歳で町立図書館長に 「図書館は交流と想像を楽しむ文化の拠点」

菅沼遼

 長野県小布施町の町立図書館「まちとしょテラソ」の館長を志賀アリカさん(30)は2021年4月から務める。公募に応じて就任したのは27歳のとき。官民一体のまちづくりで全国的に有名なこの町を学生時代に訪れたことがあり、魅力を感じていた。なにより図書館という情報の集積地で、文化の創造に携われることに心がひかれた。熱意を小論文に込め、応募。面接を経て、採用された。

 千葉県出身。小学生のころは図書館は「もう一つの家」ともいえる存在で、放課後、働く母との待ち合わせ場所はいつも図書館。帰宅まで何時間も本を読んで過ごした。絵本「きつねのおきゃくさま」や児童書「エルマーのぼうけん」がお気に入りだった。

 小学校の卒業までに子ども向けコーナーは読み尽くした。戦争や白血病など、学校で習っていなかったことも活字を通して知った。知らない世界を見せてくれる本が大好きだった。

 ただ、図書館に通う習慣は社会人になって途切れた。コンサルティング会社では人材育成や組織開発に携わり、顧客の成長を手伝う仕事にやりがいを感じた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を経て考えた。多くの人々が苦しむ世の中では、誰かの居場所づくりが求められているのではないか――。4年間勤めた会社を辞め、アニメーションや映画の製作会社への就職を考えていたころ、まちとしょテラソの館長募集を知った。

 自身の人生の「バイブル」といえる作品が、宮崎駿さんの長編漫画「風の谷のナウシカ」。大学生のころ出会ってから繰り返し読んでいる。その時々の境遇によって、心に刺さる場面が違う。「自分が今どこにいるのか、教えてくれる存在です」

 町の子どもたちにも漫画を起点に興味の幅を広げてほしい。館長就任後、賞の受賞歴など選定基準を設け、漫画の所蔵を増やした。あくまで興味への入り口とするのが目的なので、10巻を超えるような長編は1~5巻しか所蔵しないのが基本。人気漫画を中心に、その内容に関連する様々なテーマの書籍を紹介する「文脈棚」というコーナーも設け、自ら選書してきた。

 また、コンサルとして培った組織開発の知識を生かして、少ない職員と予算で、町民からの希望が多かった移動図書館を導入。軽トラックの荷台に載せられる「モバイルハウス」型としたことで、通常のブックトラックの10分の1ほどの経費で実現できた。

 館長は任期制で、残りは約2年。今は育休中で、今秋の復帰を予定している。「次はどんな企画をしようか、楽しく考えています。図書館は交流と想像を楽しむ文化の拠点。時勢に合った情報発信をして、いろんな問いが集まる場所にしていきたいと思います」(菅沼遼)…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません