イヌワシのひな守れ、伊吹山山頂に初の保護柵 車道から立ち入り制限

平岡和幸

 滋賀・岐阜県境の伊吹山(標高1377メートル)の山頂駐車場付近で、国の天然記念物で絶滅危惧種のイヌワシのひなが生まれたとみられることがわかった。周辺に大勢の人が集まると子育てを放棄する可能性があり、滋賀県と米原市は19日、車道のガードレールに保護柵を設置し、道路外に立ち入れないようにした。伊吹山でイヌワシ保護のために柵を設けるのは初めてという。

 今月10日に米原市在住の動物生態写真家、須藤一成さん(63)が、「伊吹山ドライブウェイ」(全長17キロ、有料道路)終点の山頂駐車場付近の崖の斜面で親鳥の様子を確認した。繁殖に影響を与えないように遠距離からビデオカメラで撮影。ひなの姿はまだ見えないが、10日以降、親鳥が継続して巣の中に持ち運んだ獲物を餌として与える行動をしており、孵化(ふか)したとみられる。

 ドライブウェイは冬季閉鎖を終え、20日に開通する。自動車専用道路のため本来は歩くことができないが、これまでもイヌワシを撮影する大勢のカメラマンが集まったり、ガードレールを乗り越えて進入したりすることがあった。7、8年前にも同じ場所で産卵したが、ドライブウェイの開通時期に繁殖の失敗が確認されたという。

 開通前日の19日、ドライブウェイ終点付近のガードレール約450メートルに沿ってワイヤを張り巡らせた保護柵(高さ1.5メートル)を県と市が設置した。周辺でイヌワシが子育てをしているとして、ガードレールの外側に出ないように呼びかける看板も7カ所に取り付けた。市は開通日の20日に監視パトロールをして、今後も定期的に見回りをする。

 日本イヌワシ研究会(須藤明子会長)によると、イヌワシは国内で約500羽が生息している。県内には4ペア、このうち1ペアが伊吹山を生活圏にしている。過去38年の記録では、ひなが巣立ちにまで至ったのは7回しかない。餌不足による餓死やクマによる捕食、人の気配で親鳥が警戒して巣から長時間離れてしまうことなどが原因という。

 一成さんは「繁殖期の親鳥はとても神経質。巣の外に出て、戻って来る時に周辺で大勢の人が並んでいると、警戒して逃げてしまう。繁殖にとても重要な場所なので今回、保護柵を設置することになった。人間が少し後ろに下がって営巣を見守ってあげてほしい」と話している。(平岡和幸)…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません