阿蘇にありて奥能登を思う 「あたわり」と暮らしに息づく伝統工芸と

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城戸康秀

 8年前に熊本地震を経験した女性は今、故郷・奥能登に思いをはせる。阿蘇市に移り住んで半世紀あまり。能登半島地震で被災した故郷の復興を信じ、多くの人が思いを寄せ続けてくれることを願う。

 小代もと子さん(76)は石川県穴水町の寺に生まれた。24歳のときに結婚して真宗大谷派の万行寺(阿蘇市一の宮町)へ。熊本地震では本堂や庫裏で壁がはがれるなどして、車中泊で約2週間過ごした。

 寺の保育園に通う子どもたちは心に傷を負った。園は10日ほどで再開したが、数カ月もの間、昼寝ができない園児がいた。家では夜泣きが増え、余震があると家に入れなくなる子もいたという。

 地震の翌年、同じ宗派の約10人で東日本大震災の被災地を訪ねた。参加メンバーには被災者もいて、研修中止の選択もあったが、「地震を経験した今だからこその学びもある」と、岩手、宮城、福島3県を回った。

 福島県二本松市の幼稚園では、園庭の裏山沿いに高いコンクリート壁がそびえ立っていた。放射性物質に汚染された落ち葉を防ぐためだった。目に見えないものの恐怖に直面した。園児の身近にある危険と保護者たちの不安を思った。「現地で人々の息づかいとともに思いを聞いて初めて『ひとごと』ではなくなった」という。

 被災地へ思いをはせる小代さ…

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