工房全壊、無傷だった「輪島塗バイオリン」伝統が生む音色、被災地に

有料記事能登半島地震

椎木慎太郎
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 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市内の高校で8日、輪島塗を施したバイオリンとチェロの音色が響いた。奏でられた楽器は、倒壊した工房から無事に見つかった。輪島塗の楽器を生み出した職人の八井汎親(ひろちか)さん(86)も、生徒らと一緒に耳を傾けた。

 県立輪島高校(輪島市河井町)の第二体育館。1階は避難所となっていて、今も約70人が身を寄せる。2階のフロアでこの日、入学式が開かれ、新入生75人が出席した。

 式の後、つややかなあめ色のバイオリンとチェロが現れた。楽器の側面には沈金や蒔絵(まきえ)も施されている。キーボードを加えたプロ奏者3人で、「愛の挨拶(あい・さつ)」や「ふるさと」などを披露。新入生や保護者ら約150人が聴き入った。

 輪島塗バイオリンは、ニスの代わりに漆を使う。製作のきっかけは、八井さんが2005年、国際見本市に参加するためフランス・パリを訪れたことにある。

 街なかでバイオリンを奏でる人たちがいた。輪島塗の魅力を世界に発信したいと思っていた八井さんは、西洋の暮らしに根付いた楽器に輪島塗を生かすことを思いついた。

 かつて、英国人陶芸家で、日用品に美を見いだす「民芸運動」に取り組んでいたバーナード・リーチ氏から言われた一言を思い出した。リーチ氏は約50年前、輪島塗の視察のために輪島市を訪れ、こう言っていた。

 「東洋と西洋は全く違うが…

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