「日本人」は定義できない 多数派が抱く「純ジャパ幻想」の抑圧性

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聞き手・石川智也

 ミスコン受賞者やスポーツ選手など、外国にルーツを持つ日本国民に「日本人らしくない」と中傷の言葉が投げかけられる事例が相変わらず続いている。

 社会の多様性が進む一方で、なぜ「純ジャパ」幻想は維持されるのか。マジョリティーの「日本人」が抱く自画像を読み解いてきた社会学者の福岡安則さんに、幻想のよりどころをあらためて突いてもらった。

      ◇

観念の「日本人」を類型化してみると……

 日本人とは何か。それは定義不能で、問題設定そのものが虚偽だと思います。

 定義可能なのは、国籍法による「日本国民」だけですが、それも立法いかんで変わる人為的なもの。「日本人」の概念規定はどこにもありません。にもかかわらず、自分が典型的な日本人だと信じているこの国のマジョリティーは、まるで自明であるかのような「日本人」という観念を保持しています。

 その観念を「血統」「文化」「国籍」の3要素で類型化してみましょう。すべてそろった「純粋な日本人」のほか、いずれかの要素を欠く日系移民1世、帰国子女、帰化者、中国残留孤児、民族教育を受けていない在日コリアン、アイヌなどが抽出できます。もちろん現実にはグラデーションがあり、いずれにも当てはまらない人もいますが、あくまで理論的な類型枠組みです。

 このうち、日本の多くの人が…

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この記事を書いた人
石川智也
オピニオン編集部

リベラリズム、立憲主義、メディア学、ジャーナリズム論

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    田中宝紀
    (NPO法人青少年自立援助センター)
    2024年4月30日11時27分 投稿
    【視点】

    「日本人とは何か。それは定義不能で、問題設定そのものが虚偽だと思います。」 …福岡氏の冒頭の言葉に心打たれます。私自身も移民背景を持つ「純粋ではない日本人」のひとりとして、この問い自体に疑問を持ってきました。 「純ジャパ」という4文字を始め

    …続きを読む
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    真鍋弘樹
    (朝日新聞フォーラム編集長=社会、国際)
    2024年4月10日14時14分 投稿
    【視点】

    「日本人とは何か」という概念のアップデートをしなければならない。福岡さんのインタビューを読み、その思いを深くしました。 国立社会保障・人口問題研究所の最新の推計によると、2070年には外国人人口は 940 万 2 千人まで増え、総人口の

    …続きを読む