移住して町議に初当選した女性の願い 帰還進まぬ原発事故の町で

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西堀岳路
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 福島県富岡町で3月24日に投開票があった町議選で、東京出身の女性が初当選した。東京電力福島第一原発事故で全町に出された避難指示が段階的に解除され、復興途上にある同町で、事故後の新たな移住者が町議になるのは初めてだ。

 開票日の夜。事務所ではらはらしていた辺見珠美(たまみ)さん(35)のスマートフォンに、開票所にいる友人からラインが届いた。「282票で当選です」。集まった10人ほどの支持者は、避難先から帰還した町民や移住してきた若い母親ら。「やったー!」。抱き合って目を潤ませた。定数10で、得票は8番目だった。

 放射線工学を学んでいた大学生の時に原発事故があった。すぐに放射線測定のボランティアで福島入り。卒業後に川内村へ移住し、4年前、富岡町に移り住んだ。性別や世代を超えた友人ら「大切な人たち」がたくさんできたからだ。

 事故当時の町人口は約1万6千人。今年3月1日現在で町に住む人は約2300人で、帰還者より移住者が多いとされる。町民の帰還が進まないなか、県は新たな移住世帯へ5年間居住するのを前提に最大200万円を支給する枠組みをつくった。町も子育て世帯の転入に30万円を補助したり、子ども1人に月1万5千円を最長3年間支給したりして移住を促進しているためだ。

 辺見さんは経験をいかそうと、町で移住コーディネーターを務め、移住希望者や移住後の人たちの相談にのってきた。ただ、辺見さん自身、帰還した住民との間に何となく距離感を感じていた。町にとけ込むため、様々な活動に参加し、消防団にも入団した。

 それでも「ずっと町に住むの…

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