「隠れ教育費」に潜む当たり前を問いなおす 小中学校で100万円超

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大坪実佳子

 制服、ランドセル、計算ドリルや国語ワーク。子どもが小中学校に入学すると買わねばならないものは、多岐にわたります。部活動費や、修学旅行費など行事に関わる出費も少なくありません。

 そうした学校にまつわる保護者負担を「隠れ教育費」として、問題提起をしてきた人たちがいます。

 公立小6年間では約63万円、公立中3年間では約51万円。文部科学省の「子供の学習費調査」を元にした試算では、これだけの保護者負担が発生する。

 憲法26条には「義務教育は、これを無償とする」とある。家庭の経済状況に左右されず、全ての子どもが教育を受けられるようにするためだ。憲法の「無償」はどの範囲で、どう考えたら良いのだろうか。

 千葉工業大准教授の福嶋尚子さん(42)が研究者として、埼玉県の小中学校に20年以上勤めてきた柳澤靖明さん(42)が事務職員としての立場から、実態や歴史などを多角的に検証。

 なぜそれを買う必要があるのか。購入に至るまで、教職員や保護者らでどんな話し合いがあるべきか。費用はいくらが妥当で、誰が負担するべきなのか――。

 「隠れ教育費」が家庭の負担となり、ときには子どもの教育を受ける権利や学ぶ機会が十分に保障されないことがあると訴えてきた。

 2019年に、初の共著「隠れ教育費」(太郎次郎社エディタス)を出版した。22年には、沖縄県の公立小中学校で事務職員をしている上間啓史(うえまひろふみ)さん(38)が加わり、「『隠れ教育費』研究室」という公式サイトもオープンさせた。

 コラムや連載を目にした全国各地の人から、講演や取材の依頼がひっきりなしに届く。

 福嶋さんと柳澤さんは10年…

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年4月6日12時44分 投稿
    【視点】

    「義務教育は無償」と言われつつ、実際には多額の費用がかかっている。可能なものから無償化を、あるいは画一的に決める・持たせるのではなく柔軟化を、という主張に共感する。 特に額の高い制服については、着てもよく、着る場合にはリサイクルなどの選択肢

    …続きを読む