モノが運べなくなる可能性は トラック運転手、残業規制スタート

平林大輔 高橋豪
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 4月からトラック運転手の残業時間に上限規制が始まった。政府の働き方改革の一環だが、働ける時間が減ることで、輸送力が足りなくなる「2024年問題」が懸念されている。もともとの人手不足に拍車がかかり、これまで通り物が運べなくなる可能性もある。

 トラック運転手の時間外労働はこれまで規制がなかったが、4月からは年960時間が上限となる。違反した事業者には罰則が科せられる。働いている時間に休憩時間などを加えた「拘束時間」も短くなる。

 全産業平均に比べて労働時間が2割ほど長い一方、賃金は5~15%低い。自動車運転者の有効求人倍率は2%台で、全産業平均の2倍ほどに高止まりしている。もともと人手不足が進んでいるところに、残業時間を減らさざるを得ない運転手がいるため、輸送力の落ち込みは避けられない。

 物流シンクタンク・NX総研の2022年の試算によると、何も対策を講じなければ、24年はトラックの輸送力が14・2%不足するとされる。これは運転手約14万人分に相当する。

 とくに影響が大きいとされるのが長距離輸送だ。運転時間が長いうえ、発送先などで荷物を待つ時間がある。到着時間は決まっており、代わりの運転手にバトンタッチすることが難しく、労働時間が長くなりがちなためだ。

「すぐに物流滞る可能性低い」

 物流が滞る事態を避けるため、規制が始まるのに先駆けて、官民を挙げた取り組みが続いてきた。

 大手の物流事業者や荷主には、長時間労働のもととなる荷待ちの時間削減や、荷役を運転手に任せなくするといった計画を作ることを義務づける。物流総合効率化法を改正する。違反した場合は罰金が科されることもある。

 運送事業者にとって不利な商習慣の是正に乗り出す「トラックGメン」も発足。荷主や元請けが無理を押しつける商習慣を見直すため、1度の運行で平均して計3時間ほどかかるともされる荷待ちと荷役(付帯作業)は、2時間に短縮する目標を掲げる。

 荷主や物流の業界団体に自主的な削減計画を作るよう呼びかけ、1月下旬時点で100以上が打ち出された。大手スーパーマーケットが集まる「チェーンストア協会」は、荷待ち・荷役を1時間以内に収める独自ルールを定めた。

 こうした取り組みの成果に加え、物価高騰などでコロナ禍前に比べて荷物の総量が減っているため、「すぐに物流が滞る可能性は低い」と話す物流関係者は多い。

 ただ、道路貨物運送業で働く人は、40~50代で6割以上を占める。30代以下は2割台にとどまり、平均年齢は上昇傾向だ。運転手数は年々減っており、「いずれ荷物が運べなくなる事態が起きうる」という。(平林大輔、高橋豪)

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