一つでもヒントを 能登半島地震の被災者が宮城・岩手の沿岸部視察
東日本大震災の被災地から復興の教訓を自分の目で見て学びたいと、能登半島地震で被災した女性が宮城、岩手両県の沿岸を視察している。被災前から過疎化の進む地元は津波被害も受け、地区再建への道筋は見えない。発生からまもなく3カ月。一日でも早く、一つでもヒントをと、復興ぶりを見て、関係者から話を聞く。
石川県珠洲市三崎町寺家にある須須(すず)神社の権禰宜(ごんねぎ)、多田千鶴さん(44)。歴史ある神社も地震被害を受けながら、津波などで被災した地元の人たちの支援に立ち上がった。地区の約130世帯は現在3分の2ほどが地区外に避難しているといい「このまま戻ってこないと、秋の祭りもどうなるのか」。
視察に動いたのは、復興に向けた行政の動きを待つだけではなく、住民としてどうしたらいいかを考えたいとの思いから。周囲も誘ったが、「まだそんな段階ではない」などと動けない人がほとんどだった。ならばまずは単独でもと、福島県から地区に支援に来た整骨院長の長田卓也さん(40)の案内で27日、両県の被災地を回り始めた。
初日に訪れた宮城県気仙沼市は13年前の震災で壊滅的な被害を受けた。津波だけでなく大規模な火災にも見舞われた。市職員から防潮堤整備やまちづくりでの住民合意の難しさや地域のコミュニティー再生の大切さなどを聞いた。
気仙沼市では発生から約3カ月後に復興計画づくりが始まったと説明を受け、多田さんは「まさに私たちの今と同じ時期で、考えられないくらいのスピード感。違いを実感した」と驚いた。
多田さんは28日、宮城県南三陸町役場で佐藤仁町長から話を聞く予定。岩手県大船渡市役所にも行く。
多田さんは「東北に来てみて復興にはビジョンが必要だと感じた。地元でようやく動き出す復興に、住民からも行政に声をあげていきたい」と話した。(山浦正敬)